EVは本当に環境にやさしい?走行中のCO₂排出量と環境へのメリット・デメリット
- 投稿日:2025.12.01
- 更新日:2025.12.01
地球温暖化やエネルギー問題が深刻化する中、ガソリン車に代わる次世代のモビリティとして期待されるのが「EV(電気自動車)」です。排ガスを出さないクリーンな乗り物として評価され、各国で補助金制度やインフラ整備が進んでいます。
しかし、EVに対しては「本当に環境にやさしいのか?」「製造時のCO₂排出量は?」「電気は火力発電で作るから環境に悪い?」といった疑問や批判も多く存在します。
この記事では、EVの環境面でのメリット・デメリットを整理し、V2H(車から家への電力供給)といった最新技術が環境に与える影響も交えて、EVの真の姿に迫ります。
目次
EVの環境面でのメリットとは?
① 走行中のCO₂排出ゼロ
ガソリン車の排気ガスを削減することは都市のヒートアイランド現象、ぜんそくなどの呼吸器疾患リスクの軽減にもつながるとされています。EVはモーターで走るため、走行中にCO₂やNOx(窒素酸化物)、PM(粒子状物質)といった排気ガスを一切出しません。これは都市部の大気環境改善に大きく貢献します。
ガソリン車:1kmあたり約120gのCO₂を排出(※車種により異なる)
EV:走行中のCO₂排出はゼロ
② 再生可能エネルギーとの相性が良い
EVは太陽光・風力などの再エネで発電された電気とも相性が抜群。例えば、自宅に太陽光パネルがある場合、昼間にEVを充電することで、完全なゼロエミッション移動手段が実現できます。
③ 騒音公害の削減
EVはエンジン音がないため、騒音レベルが非常に低いのも特徴。都市部や住宅街では、交通騒音の大幅な削減に貢献します。
EVの環境面でのデメリット・課題
① 製造時のCO₂排出量が多い
EVは特にバッテリーの製造時に大量のエネルギーを使用し、ガソリン車よりも製造段階でのCO₂排出量が多くなる傾向にあります。その量はガソリン車と比較して、1.5~2倍とも言われます。
ただし、EVは走行中にCO₂を排出しないため、一定の走行距離を超えるとガソリン車よりも総排出量が少なくなるという研究結果も多く、環境省でも、ガソリン車と電気自動車のライフサイクル(製造→使用→廃棄)比較を行い、製造段階でEVの電池が寄与して製造時排出は高くなる一方で、使用段階(走行中の燃料/電力)の差によりライフサイクルアセスメント合計ではEVが低いと結論付けています。
② 使用する電気の発電源によっては「間接的なCO₂」
電力会社の発電方法によっては、石炭や天然ガスといった火力発電が多い地域では、EVの充電も間接的にCO₂を排出することになります。日本では現在も電力の約70%が火力発電に頼っています。
ただし、再生可能エネルギーの比率は年々増加しているため、EVの「環境性能」は電気の発電源に左右されるという点に注意が必要です。
使用後のバッテリー処理とリユースの課題
EVが普及すると課題になるのが、大量の使用済みバッテリーの処理です。
環境への懸念
バッテリーに使われるリチウム、コバルト、ニッケルなどの金属は採掘過程での環境負荷が高く、廃棄処理を誤ると有害物質が流出するリスクがあります。
ポジティブな動き:リユース・リサイクル
EV用バッテリーは車としての性能を下回っても、蓄電池としては再利用可能です。家庭用蓄電池や非常用電源として、再利用する「セカンドライフバッテリー」への期待が高まっています。
また、多くの自動車メーカーがバッテリーリサイクル体制を整備しつつあります。
V2Hを使えば、環境への貢献度が大きくなる
V2H(Vehicle to Home)は、EVに蓄えた電力を家に供給できる仕組みであり、環境に対してさまざまなメリットがあります。
① 電気使用ピーク時の発電所負担の軽減
昼間(電気使用量が多い時間帯)にEVから家に電力を供給し、夜間(電力が余る時間)にEVを充電すれば、発電所の負担が分散され、エネルギーの安定供給とCO₂排出削減に貢献します。
② 太陽光発電と連携して再エネ最大活用
昼間、太陽光で発電した電気をEVに貯め、夜に家で使えば再エネの自家消費率を高めることができます。これにより、無駄なくクリーンエネルギーを活用できるようになります。
太陽光発電とV2Hの連携は「太陽光発電でEV充電をもっと賢く!V2Hの導入効果も紹介」をご覧ください。
③ 非常時の電源確保で防災にも
V2Hがあれば、停電や災害時にEVが非常用電源となり、化石燃料を用いた発電機を使わずに済むため、環境負荷の少ないライフライン確保に繋がります。
V2Hによる停電対策は「V2Hで蓄電池代わりになる仕組みと使い方を解説!災害時の停電もEVで安心」をご覧ください。
世界と日本のEV動向
2024年の世界新車販売の約20%がEVで、中国は約50%、ノルウェーは約90%と世界を牽引しています。欧州でもドイツやフランスが再エネ拡大とEV普及を同時に進め、補助金や充電網整備を強化しています。
一方、日本は2035年までに新車を100%電動化(EV・PHEV・HEV・FCV)する目標を掲げていますが、現状のEV比率は数%にとどまっているため、政府支援でさらなる普及拡大を図っています。補助金や充電インフラ整備も進行しており、自治体によってはV2H機器への補助金も出ています。V2Hへの補助金の詳細は「【2025年度】V2Hの補助金はどのくらい?国と各自治体の併用例・申請期間も解説」をご覧ください。
- ※出典:IEA「Global EV Outlook 2025」
まとめ:EVは「環境にやさしくなる可能性のある選択肢」
EVは単なるエコカーではなく、暮らしとエネルギーのあり方を変える可能性を秘めた存在です。環境への貢献度は「走行中の排ガスゼロ」という面だけでは測れず、製造・使用・再利用といったライフサイクル全体での評価が必要です。そこに、V2Hのようなエネルギー自給と分散型電力社会への架け橋となる技術が加わることで、EVの本当の価値が見えてきます。
今後、再生可能エネルギーの導入拡大や、バッテリーのリサイクル技術の進展が進めば、EVは「よりクリーンで持続可能な移動手段」として世界を牽引していくでしょう。