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通学定期券発売時の混雑を解消する
自動定期券発行機への新システム導入

春は門出の季節。
京阪電気鉄道株式会社様(以下、京阪電鉄様)の各駅では、
通学定期券を購入する中学・高校生、大学生の長蛇の列ができることもあります。

「この混雑を少しでも解消することはできないか」。
そんな現場の声が、3月から4月の年度またぎ時期には、通学定期券を継続購入できない進級生に対して自動定期券発行機により継続購入を可能とするシステムの開発につながりました。

春、進級生は
自動定期券発行機で通学定期券を継続購入できない!
窓口の混雑を解消する方法はないか?

「前年度から継続して同じ区間の通学定期券をお買い求めになる進級生の購入手続きをもっと簡略にすることはできないでしょうか?」 発端は、京阪電鉄様の各駅でお客さまに対応する駅係員の方からそんな声が出されたことでした。オムロンソーシアルソリューションズ(以下、OSS)の新入社員研修の一環として、「現場で働く方の声を聞かせていただきたい」と新入社員がリサーチを試みた時のことです。

通学定期券は通常、定期券発売窓口と自動定期券発行機で発売されています。在籍当該年度であれば、使用中、あるいは使用済の定期券を利用すると手続きを省略して自動定期券発行機で簡単に定期券を購入できます。しかし春だけは、進級生であっても新年度の購入資格を確認するため、すべてのお客さまに申込書や通学証明書などの必要書類のご提示をお願いし、窓口の端末で駅係員の方が新しい通学定期券を発行していました。

「高校や大学の最寄駅では、4月の2週間で数千人ものお客さまが通学定期券を購入されます。臨時窓口を増やしていますが、それでも夕方などお客さまの集中する時間帯には長い列ができることもあります。窓口業務を終えるのが、21時を過ぎてしまうこともありました」と、駅係員の方は振り返ります。

中でも課題は、技術的には継続購入が可能な進級生に「資格確認という制度上の理由」で自動定期券発行機に購入制限を設け、新年度の通学定期券を自動定期券発行機で発売*する際には発売システムに一から情報を入力し、発売手続きを行わなければならないことでした。進級生が自動定期券発行機で継続購入することが可能になれば、窓口業務の負担はかなり減ると考えられました。 「当初は、係員処理端末を改良し、旧定期券に何らかのエンコードをすることで手続きを簡略化することはできないか?と社内で検討したものの、よい解決策が浮かびませんでした」と明かした京阪電鉄開発担当者の方。「OSSさんから新システムについて提案されたのは、半ばあきらめかけていた時でした。そもそもはOSSさんのSEが新入社員研修で拾い上げた駅係員の声に対して解決策をずっと考え続けてくれたことが、嬉しかったですね」

*京阪電鉄様では自動定期券発行機において「通学・新規」購入を可能とする「駅係員定期券発売承認システム」を導入している

駅係員が発行する「年度またぎ券」を読み取り、自動定期券発行機で継続購入できるシステムを開発。"人と機械"の共同で、コスト・開発期間を低減した。

OSSが最初に提案したのは、自動定期券発行機の抜本的なシステム改良案でした。
駅係員の方の手を煩わせることなく、すべての手続きを自動定期券発行機で終えられるのが理想。また万全を期すためには、詰まり防止などの機能も必要です。しかし不慮不測の事態に自動で対応する機能を実現するのは、容易ではありませんでした。
「このままではコストも開発期間もかかり過ぎる。すべてを機械に任せるのではなく、“人”もうまく活用することで、もっと効率的なシステムにできないか」
京阪電鉄様からそんなご要望をうかがい、幾度となく話し合いと検討が重ねられました。

最終的にOSSが提案したのは、通学証明書の確認を駅係員様に委ねつつ、自動定期券発行機での通学定期券の継続購入を可能にする方法でした。 その仕組みはこうです。
駅係員の方が通学定期券購入のために並んでいるお客さまから進級生を見つけて通学証明書と旧通学定期券を確認し、「通学定期券継続発行許可証(年度またぎ券)」を渡します。この「年度またぎ券」と旧通学定期券を自動定期券発行機に投入することで、新しい通学定期券を継続購入できるようにしたのです。

自動定期券発行機で「年度またぎ券」を読み取り、通学定期券の継続購入を可能にする機能をOSSは付加。簡易なシステム改修で課題を解決するとともに、コストも開発期間も大幅に抑えることに成功しました。

繁忙期の窓口業務を1時間以上も短縮。コミュニケーションが可能にした最適なソリューション。

まず枚方市駅に試験導入。スムーズに稼働したことから自動定期券発行機が設置されている全20駅に導入が進みました。その成果は目覚ましいものがあります。

「お並びいただくお客さまのうち、およそ3分の2にあたる進級生を自動定期券発行機へとご案内できるようになり、窓口で情報入力や定期券発行にかかる時間は、目に見えて減りました。窓口の終業時刻がこれまでより1時間以上も短縮されたこともあり、とても助かっています」と、現場から喜びの声をいただいています。

「人と機械の両方をうまく使う」という京阪電鉄様のご要望に応えるOSSのフレキシブルな開発姿勢、そして何より密なコミュニケーションのもと、京阪電鉄様とOSSが目的を一つにしてともにより良いシステム開発を目指したことが、今回の最適なソリューションを可能にしました。

京阪電鉄様とオムロンソーシアルソリューションズが手を携え、
自動定期券発行機のさらなる機能向上に挑む

京阪電鉄様と共に自動定期券発行機のさらなる機能向上に取り組んでいます。

その一つが、QRコード**による定期券購入機能の搭載です。京阪電鉄様では、定期券発売窓口にある端末に必要な情報を入力し、事前承認することで定期券購入を予約できる「駅係員定期券発売承認システム」を活用されています。端末で承認が確認された後、駅係員の方が交付する予約番号と生年月日を自動定期券発行機に入力すれば、定期券を購入できる仕組みです。

今回の改良で、自動定期券発行機にQRコードの読み取り機能を付加。「駅係員定期券発売承認システム」で登録した情報を記載したQRコードを発行することで、予約番号などを入力する手間を省き、QRコードをかざすだけで定期券を購入できるようになりました。

他にも、「直感で使える機械にしたい」との京阪電鉄様のご要望を受け、購入したい定期券の種類をひと目で判別できるようトップ画面の選択ボタンを簡略化したり、より読みやすい文字色に工夫するなど、操作性も向上させています。 より使いやすくなった新しい自動定期券発行機は、京阪電鉄様の駅で動き始めています。

**QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

QRコードによる定期券継続購入機能・QRコードが入った証明書 従来と新しい自動定期券発行機画面
QRコード読み取り機能付き自動定期券発行機