お役立ち情報
トラブルを防ぐ施工術:自家消費型太陽光発電の具体的手順とポイント
自家消費型太陽光発電の施工を円滑に進めるためには、現地調査に基づいた計画を関係者へ正確に伝達し、当日はその計画通りに各ステップを確実に実行することが重要です。
特に、太陽光パネルを多数設置する場合、配線ミスが起こりやすい点に注意が必要です。
また、現地での作業が予定通りに進まないことも少なくありません。
現場では予測できない事態が生じる可能性があるため、本記事では、施工の各ステップの概要やよくあるトラブル、その防止策について詳しく解説します。
目次
現地調査から契約まで
現地調査が完了した後は、施工計画の立案に移ります。この計画は、現地調査の結果に基づき、既存の図面を修正しながら、太陽光パネルの数や総積載量、設備機器の配線長などを決定するものです。現地調査が全ての基礎となるため、ここで改めて調査結果の確認すべき重要なポイントを振り返っておきましょう。
- 図面と現状の差異確認:屋根図面や単線結線図と実際の状況に違いがあれば、修正の有無を確認。
- 日照条件の評価:現在の条件で十分な発電量が得られるか、周囲の影響がないかを確認。
- 屋根の強度確認:パネル設置後の雨漏りリスクや、無理な場合は敷地設置の検討を実施。
- 建物の耐荷重を確認:設計事務所に対して耐荷重計算書を請求。
- 適切なレイアウト確認:パワーコンディショナなどを効率よく最短距離で接続できるかを確認。
現地調査に基づいて計画を立てた後、案件の見積書を作成し、これを需要家に提示します。交渉を経て契約が締結されると、施工の準備が始まります。まず、施工日を確定するために必要な部材の調達や納期の確認、工事職人の手配を進めます。あわせて、電力会社への申請と部材の調達を並行して進行します。電力申請は、施工日までに間に合うよう速やかに対応します。
現場では予期しないトラブルが起こる可能性があるため、事前に考えられるリスクを把握しておくことが重要です。
施工計画の作成
施工計画は、現地調査に基づき、関係各所との調整を経て決定します。計画の立案には、以下の要素を考慮します。
発電量はパネルの数を増やすことで向上します。設置場所や角度も影響を与える要因ですが、それほど大きな影響はありません。太陽光発電による電力供給が可能な時間帯における設備の電力消費量を考慮し、その消費量を賄うために適切な設置場所とパネル枚数を計画することが重要です。また、障害物の影響や配置スペースにも配慮しましょう。設置場所に障害物がある場合は、朝から夕方にかけての影の影響を十分に考慮し、最適な配置や設置場所を検討します。
さらに、施工の容易性や安全性を確保しつつ、配線はできるだけ短くすることが推奨されます。配線を短くすることで、トラブル防止やコスト削減につながります。また、将来の保守や拡張を見据え、メンテナンスがしやすい配置や、電力消費の増加に対応できるスペースを確保することも大切です。
現地調査に基づき、必要な太陽光パネルの数、総積載量、架台、設備機器、機器をつなぐ配線長などを決定します。基本的には、必要分を市場から調達すれば良いのですが、配線用の銅線は2023年11月以降、日本の電線メーカーが相次いで新規受注を停止しました。2024年夏ごろから調達は可能になりましたが、納期は長いとされています。市場の状況を踏まえ、早期の調達なども検討することが望ましいでしょう。このほか、調達した設備の搬入にも配慮が必要です。設備納入業者に搬入車両や積荷のサイズや搬送ルートなどを確認し、現場に安全に乗り入れられるか事前に確認しましょう。
施工中は、EPC事業者に加え多くの担当者が参加します。そのため、日程調整を行い、施工の工程表をしっかりと準備しておきましょう。また、施工当日に雨天や嵐などの悪天候が予想される場合、延期の段取りなども事前に決めておくことで、現場での混乱を最小限に抑えることができます。
自家消費型太陽光発電の導入に向けた具体的な提案方法や施工・保守のポイントについては『EPC向け 自家消費案件 完全ガイド』で解説しています。
関係各所との調整
最近は自家消費型発電を対象にした補助金が増えてきています。2024年9月時点、国では「需要家主導型太陽光発電導入支援事業」を、自治体では東京都、神奈川県、静岡県などが補助金を用意しています。「自家消費型太陽光発電」「補助金」といったキーワードで容易に検索できます。申請準備については、需要家との契約と同時に補助金申請ができるように、事前に準備しておきましょう。必要に応じて、金融機関や自治体に協力を仰ぐと良いでしょう。
なお、オムロン ソーシアルソリューションズのWebサイトには、太陽光発電の補助金に関する情報を掲載しています。自治体ごとの補助金検索、国の対策などの情報を定期的に更新しているので、最新の情報をご確認ください。
需要家と契約ができれば、施工に進みます。自家消費型発電の施工には、多様な業者が参加します。高圧契約の場合は変圧器の工事があります。変圧器は、キュービクルと呼ばれる箱に収納されていますが、この操作は第1種電気工事士が行います。屋根の架台設置は、屋根の工事が得意な施工業者に依頼する場合もあります。参加者全員がスムーズにコミュニケーションを取れるような配慮をしましょう。
電力会社の電力系統への接続を依頼する「系統連系」の申請も必要です。これは需要家が契約している電力会社に対して行います。オムロン ソーシアルソリューションズでは、高圧や低圧といったシステムごとに必要な資料の記入例やスムーズな協議が可能になる資料を用意しています。
施工のポイント
自家消費型発電の工事では、受電盤の電力を全て遮断するため、一時的に停電が発生します。そのため、限られた時間内に工事を完了させることが重要です。工事が想定より長引くと、例えば、予定されていた工場の稼働が数時間遅れるなど、需要家の業務に支障をきたす場合があります。契約によってはペナルティが発生する可能性もあるため、できる限り短時間で停電を解消するよう細心の注意を払います。
機器の設置や配線に関しては、既存の設備にどこまで改造が必要かを確認しておきます。例えば、パワーコンディショナの仕様によっては、新しいトランスの追加が必要になる場合があります。トランスを追加すると、既存の受電盤に収まらず、新しい受電盤の増設が必要になるなど、現状に応じて改造範囲が変わることがあります。このような改造範囲については、設計段階で十分に確認しておかないと、工事が予定通り進みません。さらに、パワーコンディショナの配線が長くなる場合、特に一般の道路をまたぐ経路などについては、事前に確認しておくことが大切です。
太陽光パネルを設置した後、設計通りに発電しているかを確認することが重要です。数百枚のパネルを配線する際には、配線ミスが発生する可能性があり、その場合、発電はされても電圧や電流が設計通りに出力されないことがあります。この点を見落とさないように、十分な確認が必要です。
確認方法としては、各ポイントで電圧を測定します。太陽光パネルは数枚を組み合わせて「ストリング」とし、パワーコンディショナに複数のストリングを接続します。それぞれのストリングが計画通りの電圧を出しているか、また出力が均一かどうかを確認します。もし一つのストリングだけが極端に低い電圧を示す場合、配線ミスの可能性があります。
これに加え、「I-Vカーブトレーサー」という測定器を使用して電流と電圧を測定する方法があります。この機器を使用すると、波形が得られ、想定通りの形になっていない場合には配線ミスが考えられます。ストリングごとのチェックでもミスを確認することは可能ですが、このような機器を用いることで、確認作業の時間を短縮できます。
各種チェックは太陽が出ている間でないと行えないため、日没前に終えられるよう作業の段取りを調整することが重要です。キュービクルの工事は、前述のとおり、第1種電気工事士の有資格者が担当します。正常に工事が終了すれば、有資格者から需要家へ報告が行われます。作業の段取りが悪く、最終チェック前に日没を迎えてしまうと、確認作業が別の日に延期され、有資格者の拘束時間が増えるため、費用は増加する可能性があります。
なお、システムに蓄電池を導入する場合、停電時でも蓄電池から設備に電力を供給できます。ただし、この供給システムが「特定負荷」という形式の場合、利用できるコンセントが限られます。そのため、停電時にはそのコンセントを使用するよう、需要家にあらかじめ指示しておくことが大切です。
施工時のトラブルと対処法
有資格者などと協力して工事を行う場合、依頼する工事範囲を適切に見積もり、事前に説明することが重要です。どのタイミングで停電させるか、いつ設備を設置するか、そして全体の接続テストをどの時間帯に実施するかなど、具体的な計画を明確にしておきます。
よくあるトラブルにコネクタの処理があります。太陽光パネルはコネクタで接続される場合がありますが、接続が不十分だったり、嵌合(はめあい)が不完全だったりすると、発熱が生じ、最悪の場合は火災につながる恐れがあります。コネクタはカバーで覆われているため、中の状態が見えにくく、特に注意が必要です。
また、端子台に関しては、人が触っても安全なように、線材を覆う端子カバーが取り付けられていますが、そのカバーが端子内部に食い込むと、端子の緩みを引き起こすことがあります。端子の締め付けが緩むと、接触不良やその他の事故の原因になるため、十分な確認と対策が必要です。
緩みを防ぐためには、トルクドライバーを使用して適正トルクで確実に締める必要があります。この作業は忘れやすいため、十分に注意してください。
最後に、太陽光発電協会が公開している資料の「公共・産業用太陽光発電システム手引書」2-1.安全作業準備と作業前注意事項より、工事を安全に終えるために重要な注意点を以下に抜粋しました。
- 太陽電池パネルの出力ケーブルをショートさせると火災の危険がある。
- 屋根でのパネル運搬時は風にあおられることに注意が必要。
- ライターなどの発火物をパネル下に落とすと火災の恐れがある。
- パネルのガラス面には乗らないこと。割れや滑落の危険がある。
- 軍手を着用して作業し、部材の切断面などで怪我を防ぐ。
- 屋根勾配が5/10以上の場合は、屋根足場を設置する。
- パネルの結線時には感電に注意し、絶縁手袋を使用する。
オムロン ソーシアルソリューションズの強み
オムロン ソーシアルソリューションズは、太陽光発電に関して豊富な経験を持ち、多様な設備機器を開発・販売しています。特に自家消費型発電においては、高機能な「保護継電器」を提供し、工事のハードルを大幅に下げることに成功しました。
保護継電器の大きな特徴として、工事工数の削減が挙げられます。従来は現地で設置用の丸穴や四角穴を開ける金属加工が必要でしたが、この保護継電器はビスで表面に取り付けるだけで済むため、金属加工が不要となり、施工工数を大幅に削減できます。また、この保護継電器は複数の機能を備えており、設置する機器の数も減らすことができるため、さらに工数を削減できます。この効率化により、1回の工事で数時間の短縮が可能となり、日没を考慮しなければならない家消費型発電の工事において、大きなメリットとなります。
従来の高圧自家消費型発電では、逆電力リレー(RPR)や出力検出用のOVGRといった機器が必要でした。また、蓄電池がある場合、急な停電時に自動で蓄電池の給電に切り替えるための電源も必要でした。オムロン ソーシアルソリューションズの保護継電器は、これらの機能を一つに集約し、最小限の機器構成で自家消費システムを構築できます。さらに、コントローラー機能も備えているため、運転用のプログラミングを行わずとも自動運転が可能です。
多様な機能を内蔵
工場設備などで消費する電力を自家発電でまかなう際、一般的には消費電力が大きく減少した場合でも、発電量がそれを下回らないように、通常は消費電力の約8割を発電します。一方、オムロン ソーシアルソリューションズの自家消費型発電システムは、独自の高速・高精度負荷追従技術を採用しており、消費電力の99%に対応する非常に高精度な発電ができます(日射量や消費電力が急激に変動する場合には、99%に達しないこともあります)。これにより、「最小限の設備構成で最大の発電」を実現可能です。
ロスの少ない発電が可能
なお、実際の施工に関しては、さまざまな施工動画を用意しており、施工時の注意点や設定方法などについて詳しく紹介しています。
施工の成功のために
自家消費型発電の施工には、EPC事業者をはじめ、さまざまな工事担当者が関与します。工事は停電期間中に完了させる必要があるなど、時間的な制約が多くなります。こうした制限を乗り越えて施工を成功させるためには、綿密な計画が不可欠です。現地調査の結果を踏まえ、太陽光の移動などあらゆるケースを想定し、トラブルのない計画を立てることが重要です。
施工時には、安全を最優先に考える必要があります。電気を扱うため、パネルのケーブルを金属に接触させないように配慮するなど、感電や不適切な施工による火災のリスクを十分に排除することが求められます。その上で、効率的な作業を目指すことも重要です。また、最終的な動作確認時に日没を迎えないよう、各工程の時間配分にも十分な注意が必要です。
現在、太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)の新規案件がなくなり、電気料金が高止まりしている中で、自家消費型発電は今後大きな成長が期待されています。しかし、野立てとは異なり、新たに学ぶべき点が多いことも事実で、新たな努力や体制の整備が欠かせません。
最新技術を学び、新体制を整えることは、自家消費型市場におけるEPC事業者の優位性を高めることにつながります。成長が見込まれるこの市場において、自社の競争力を高め、より多くの案件を獲得していきましょう。オムロン ソーシアルソリューションズも、前進するEPC事業者を全力で応援いたします。
自家消費型太陽光発電について、状況別の対応方法について知りたいEPC事業者様に向けてホワイトペーパーを用意しております。電力需要家への提案方法から、現地調査や施工の注意点、施工完了後の保守のポイントまで、無料でご覧いただけます。詳しくは、以下よりご覧ください。