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EPC事業者向け:自家消費案件における現地調査のポイント解説
自家消費型太陽光発電の提案では、需要家から前向きな反応を得た後、具体的な提案へ進むために現地調査を実施します。図面や資料がそろっていても、現場で確認すると状況が異なることが多くあります。設備の導入可否やシステムの規模の決定、正確な費用対効果のシミュレーションを行い、提案を進めるためにも、現地調査は不可欠です。
本記事では、現地調査の重要性を再確認し、その流れや事前準備について解説します。加えて、日照条件や屋根の強度、機器の設置場所、作業スペースの確保など、具体的に確認すべきポイントも紹介します。
目次
自家消費案件における現地調査の重要性
一般的に、建物や配線図面で把握した状況と現場の状況には相違があります。そのため、現場に赴き、図面と現状を照らし合わせて修正する作業は不可欠です。リスク回避と最適な設計のためにも、現地調査は重要です。
図面では把握できない状況について説明します。例えば、太陽光パネルの設置を予定している屋根に隣のビルの影がかかっている場合、発電に支障をきたします。また、季節によって近くの樹木の影が掛かってしまうような場合にも発電量に影響を及ぼします。このように、図面だけでは把握しきれない屋根の上の状況や影の有無、建屋周辺の状況確認をするためにも、現地調査は重要です。
現地調査の事前準備
事前調査には、電気受給契約書、電力明細、単線結線図、建物の屋根図面などの書類が必要です。これらの書類は、システムの適切な設置や運用を検討するために欠かせないものであり、需要家に依頼して入手します。
電気受給契約書や電力明細は、契約状況や消費電力を把握し、最適な発電システムの規模を見積もるために重要です。単線結線図は、既存の電気設備との接続方法を確認し、システムの設置における技術的な検討に必要です。屋根図面は、太陽光パネルの設置スペースの確保や安全性の確認に必須です。
単線結線図の例
さらに、過去1年間の30分デマンド値(30分ごとの消費電力の平均値)があれば、導入後の具体的な効果をより正確にシミュレーションでき、提案の精度が向上します。30分デマンド値データは、通常、需要家が電力会社に請求して入手します。このデータにより、消費電力のパターンを詳細に把握し、ピークカットや電力コスト削減のシミュレーションが可能です。
日照状況のデータも非常に重要です。日照量は、地域や太陽光パネルの設置角度によって異なり、システムの発電量に直接影響を与えます。日照時間については、気象庁の日照時間一覧表を参考にできます。また、発電量の予測には、NEDOの日射量データベースなどで提供される過去のデータを利用することで、より正確なシミュレーションが可能です。
これらの書類やデータの入手と並行して、現地調査の日程を需要家や工事関係者、専門技術者と調整します。契約電力が50kW以上の場合は高圧電力となるため、電力会社に停電の依頼をするほか、主任技術者の立ち会いを手配する必要もあります。
自家消費型太陽光発電の導入に向けた具体的な提案方法や施工・保守のポイントについては『EPC向け 自家消費案件 完全ガイド』で解説しています。
現地調査のチェックポイント:施設・環境確認編
現地調査では、まず図面と現場に差異がないかを確認します。設備が何年も経過している場合、後から追加や変更された部分が図面に反映されていないことがあり、情報が欠落しているケースも見られます。そのため、図面が完全に正しいとは考えず、全ての箇所を入念にチェックする必要があります。また、現地の配線が、どの配管を通っているかを調査し配線の距離を実測しておくことも重要です。
屋根の向きや角度も屋根図面と照らし合わせて確認しましょう。図面と異なる場合、太陽光パネルの設置に大きな影響を与える可能性があります。また、周辺の建物や樹木による影の影響は現地でしか確認できないため、四季を通じた太陽光の変化も考慮しましょう。
これらの調査結果により、期待できる日照条件や発電量のおおよその目安が得られます。ただし、日照条件は常に変動し、季節の影響も大きいため、あくまで「目安」として捉えることが重要です。発電量については目安に過ぎませんが、パネルの設置向きや角度については、最適な緯度・経度などに基づいてベストな値があります。その値を基に必要な太陽光パネルの数を算出します。
ただし自家消費型の発電の場合は、太陽光発電量だけでなく発電を利用する設備の稼働も考慮した投資回収のシミュレーションが必要になるため、計算が複雑になることがあります。EPC事業者側で発電容量や削減できる電気代のシミュレーションが難しい場合は、専門の協力会社に依頼することもあります。
屋根にパネルを設置する場合、屋根の形状、角度、材質によって設置の難易度が異なります。架台を固定するためにアンカーを打ち込むかどうかでも難易度は変わってくるため、一概に判断することは難しい部分です。特に、野立てを主としていたEPC事業者が自家消費型発電に参入する際は、屋根に関する知識やノウハウを習得することが重要です。
例えば、陸屋根(平屋根)にアンカーを打ち込むと、雨漏りのリスクが生じる可能性があります。このような場合、重石工法や置石工法、アンカーレス工法など他の工法など設置環境を考慮した工法を選択することが求められます。
現地調査では、設備をどのように配置するかも考慮します。パワーコンディショナは水没を防ぐため、通常1.6m以上の高さに設置しますが、メンテナンスを考慮すると2m以内に収めるのが望ましいです。また、パワーコンディショナは動作中に内部温度が80度以上になることがあるため、直射日光を避けられる北側の日陰に設置するのが理想です。もしそれが難しい場合は、庇(ひさし)などを設けることを検討しましょう。
これらの注意点を踏まえた上で、関連設備の配線ができるだけ短くなるような設置位置を考えることが重要です。配線が長くなると電力の減衰が生じ、効率が悪くなるだけでなく、線材のコストも上がります。銅線は価格が特に高いため、できる限り配線を短くすることが求められます。
なお、自家消費型発電であっても、関連する電力会社に系統連系の申請が必要です。申請後、電力会社との間で逆潮流の有無やパワーコンディショナの設定についてのやりとりが発生しますが、これらは一般的な手続きであり、心配する必要はありません。また、自家消費型発電の場合、通常は既存の電力消費量を超えて発電することはないため、電力会社からの制約や追加料金の発生は基本的にありません。
構造評価について
パネルなどの設備が新たに設置される屋根の強度も大切です。屋根の強度確認や強化のためには、設計事務所に問い合わせて構造評価を入手する必要があります。構造評価とは、屋根が太陽光パネルなど、設置する機器や部品の重量に耐えられるかを判断することを指します。通常、現地調査が終了した後に、必要なパネルの重量を算出し、その数値を基に設計事務所へ屋根の構造上問題があるかどうかを確認します。この際、パネルの重量が屋根1平方メートルあたり何キログラムになるのか、また合計でどのくらいの重量になるのかといった具体的な数値を作成して問い合わせます。一般的には「1平方メートルあたり何キログラムなら問題ない」「合計重量が何キログラム以下であればOK」といった返答を受けることが多いです。
構造評価の結果、必要なパネル数では屋根に載せるのが難しいというケースもあります。特にスレート屋根は耐荷重が低いため、設置が難しいです。そのような場合は、パネルの枚数を減らす、屋根の別の場所に設置するなどの対応を検討する必要があります。場合によっては、屋根ではなく敷地内に設置することも考慮すべきでしょう。
現地調査のチェックポイント:工事・施工準備編
現地調査では、施工を見据えた確認も行います。例えば、資材の搬入ルートや保管場所についてです。屋根などの建物にパネルを設置する場合、建物内では常に物品の出入りがあるため、資材を建物内に保管すると安全が確保されることが多く、大きな問題は発生しにくいでしょう。
そのほか、いくつか確認すべき重要な点があります。まず、工事が屋根以外の建物の外部でも行われるかどうかを確認する必要があります。また、設備の搬入にクレーン車などの大型車両が必要かどうかも重要です。外部での作業がある場合には足場の設置を検討し、クレーン車を使用する際には、その進入経路や作業スペースが確保できるかどうかを事前に確認しましょう。
資材の盗難など、セキュリティ面も配慮が必要です。自家消費型発電の場合、建物自体の警備やセキュリティがしっかりしていれば、野立ての場合に比べて盗難のリスクは低いと言えます。ただし、建物が休業中の場合、普段のセキュリティレベルは低下する可能性があるため、その点には十分な注意が必要です。特に、扉などの施錠は確実に確認しておくことが重要です。なお、屋根の現地検証は高所で行うことが多いため、安全帯の着用など、安全対策を講じることが大切です。
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導入事例 | 再生可能エネルギーを創り活用するエネルギーソリューション
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まとめ:効果的な現地調査のために
現地調査は、多くの関係者が集合し、限られた時間で対応するため、やり直しが難しい作業です。調査前には「チェックリスト」を作成して、万全の準備をしておきましょう。
以下にチェックリストの例を掲載します。
NO | 調査項目 |
---|---|
1 | 図面と現場の違いを確認・違いがあれば図面に反映する |
2 | 相順(逆相で受電していないか?) 検相器で受電の相順を確認する。逆相の場合は保護継電器設置端子を逆相にする |
3 | キュービクル電灯容量 PV、蓄電池を設置するキュービクル容量は十分か?不十分の場合は対応方法を検討要 |
4 | PCSを接続する分電盤の確認 ブレーカーの容量、逆接続の可否、漏電ブレーカーの整定値など |
5 | PCS、蓄電池、GW設置場所 壁面設置、C形鋼設置、基礎工事の要否など |
6 | CT設置場所の確認 CTを設置できるか?CTの種類(アンペア、ケーブル径)の決定 |
7 | ケーブル引き回しの確認 ケーブル長(CTケーブル、PV PCS-専用保護、PV PCS-GW-Box、PV PCS間、PV PCS-蓄電PCS、蓄電PCS-蓄電GW、PCS-特定負荷分電盤、PCS-自立コンセントなど) |
8 | 保護継電器設置検討 専用保護継電器、ZPD設置検討。高圧のVTとCTは設置されているか。設置されていない場合は設置場所、配線方法の確認 |
9 | 停電時負荷の確認 負荷の種類、容量。特定負荷分電盤の設置場所。特定負荷分電盤2kVA以下。全負荷分電盤4kVA(200V×20A。片相2kVA)以下 |
10 | 停電工事の要否 高電圧側の配線が必要な場合は主任技術者と停電工事の調整 |
11 | 電力監視装置、デマンドコントローラーなどの保護継電器と併設機器の確認 併設機器があれば、併設時の配線方法をマニュアルなどで確認 |
12 | 電力会社スマートメーター(スマメ)の位置、受電電力の状況(消費電力、力率、進みor遅れなどスマメで確認できれば) |
13 | その他 PCS、蓄電池、GW、専用保護継電器、CTなどの設置場所、分電盤などは、後で確認できるように、極力、写真を撮っておく |
自家消費型発電システムの設置作業では、キュービクルの接続が必要となる場合があります。キュービクルは、発電所から送られる高圧電気を施設で使用できる低圧電気に変換するための変圧器を収納しており、この作業には第1種電気主任技術者の資格が必要です。また、投資回収に向けたシミュレーションなど、自社の技術だけでは対応できない部分があるため、各分野の専門家との効果的な連携が重要となります。
特に、野立て中心であったEPC事業者が自家消費型発電に参入する際には、さまざまな知識やスキルの習得が求められます。例えば、平屋根にアンカーを打ち込んだ際の雨漏り対策や、エネルギー消費のピーク時に太陽光発電を活用してピークカットを実現するなど、新たな対応が必要になる場合があります。しかし、これらの課題には必ず前例があり、経験豊富な専門メーカーから知見を得ることで、確実に前進することが可能です。
オムロン ソーシアルソリューションズでは、信頼性の高いパワーコンディショナや蓄電池を中核とし、多様な太陽光発電システムを構築してきました。特に、自家消費型発電には大きな期待を寄せています。一緒に新しい市場の開拓に取り組みましょう。
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