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EPC事業者のための自家消費型太陽光発電プロジェクトのステップバイステップガイド
太陽光発電業界は今、大きな転換期を迎えています。特に自家消費型太陽光発電は、環境意識の高まりとエネルギー事情の激変により、新たなビジネスチャンスへと変貌しました。ここでは、EPC事業者が自家消費型という成長市場に効果的に参入し、成功を収めるための具体的なガイドを提供します。市場理解から提案方法、導入プロセス、成功戦略の流れの中、事前準備から施工、アフターフォローに至る実践的なアドバイスを網羅。積極的な市場参入とそのためのノウハウ、サポートネットワークの構築など、EPC事業者の経営者や部長に向けた必読の内容をお届けします。
EPC事業者として自家消費型太陽光発電に取り組む前の基礎知識
再生可能エネルギー普及のために、2012年に太陽光発電の固定買取制度「FIT」が始まって以来、太陽光発電は大きく推進しました。しかし発電設備が広がった結果、買取価格は低下し、2022年には「買うより作った方が安い」というグリッドパリティ状況に至りました。
またウクライナ情勢などによるエネルギー価格の高騰による電力価格の向上や、世界的な脱炭素傾向による省エネ施策の加速などもあり、太陽光で発電した電気を地産地消する「自家消費型」への転換が進んでいます。
この結果、いわゆる「野立(のだて)」という売電のみの太陽光発電が中心だったEPC事業者も、自家消費型へのシフトが動き出しています。自家消費型による電力安定供給と、保守等による長いスパンでの需要者との良好な関係の維持が期待されています。
ただ自家消費型へのシフトには、太陽光発電の経験やスキルに加え、省エネシステム構築の技術やスキルも重要です。もし自社に省エネ関連の技術がなければ、新たに技術者を雇用するか省エネを得意とする業者と組むなどのアクションが必要です。
特に省エネは関係者の集まりや勉強会が多数行われていますので、そこに参加し仲間を増やすという方法は有益です。そこでは省エネの関係者が、自分たちでも太陽光発電の導入が可能かなどについて議論していますから、技術交流もしやすいと言えます。
加えて省エネ業者は、すでに需要家を獲得しているケースが多いので、彼らとしても太陽光発電の業者と組んで、既存需要家に魅力的な提案をしたいと考えています。つまり太陽光発電の業者が、自ら自家消費型を希望する需要家を探すより、効果的に出会えるはずです。
自家消費型太陽光発電の導入の流れと重要ポイント
期待の自家消費型を詳しく知るために、その導入の流れ(STEP1~6)と、その中でも配慮すべき重要なポイントを見てみましょう。
STEP 1 ― 需要家に自家消費型太陽光発電をご提案
需要家のニーズにマッチした自家消費型の基本的な提案を行います。需要家の自家消費型へのニーズは、停電時のBCP(事業継続計画)や環境への配慮、サプライチェーン全体での脱炭素対応など多様です。昨今のエネルギー事情の激変から、電気料金の削減ニーズも注目されています。
STEP 2 ― 30分ごとの電力消費データを入手して詳細シミュレーションを実施
基本的な提案が受け入れられたら、投資額の回収シミュレーションを行います。需要家の設備の詳細や、30分ごとの電力消費データなどを提供いただき、最も効率的なシステムをシミュレーションし提案します。
ポイント1:需要家に効果的な提案をするには
昨今のエネルギー事情の激変から電気料金削減のニーズは高く、自家消費型によるコスト削減の可能性を提示して、経営にどの程インパクトを与えるかを探るアプローチが有効です。関連する補助金の利用可能性も調査しておくと良いでしょう。提案に補助金をうまく盛り込むことで、コスト回収期間を7年から5年に短縮できるといった具体的なメリットを提示できれば提案のインパクトは大きくなります。
実際のシミュレーションでは、30分値のデマンドデータ以外にも、設置予定の建屋の耐荷重、単相の高圧トランスの有無、設備の単線結線図、電力会社との契約内容などの情報が必要です。これらのデータを元に、投資と回収の最適解をシミュレーションして提案します。
STEP 3 ― 実際にシステムを導入する場所へ赴き、設置場所や距離を確認して設計
シミュレーションで導入の承諾を得たら、実際の設置場所に行き、使用する電線の長さなど細かな点を調査して必要な工事の見積もりを行います。
STEP 4 ― 詳細システムのご提案とお見積もりの提示、その後ご契約
現地調査を終えたらシステムの詳細を決定し、最終提案とお見積りの提示になります。ご契約では、今後の保守契約等などについても相談しておくと後がスムーズです。
ポイント2:計画立案と設計段階で配慮するべきことは?
現場確認は徹底的に行いましょう。配線はどこをどう繋ぐか、電線の必要なメートル数はどれぐらいか等、見積もりが不正確だと後で損失を被るかもしれません。
需要家のニーズに対して、過剰である必要はありませんが余裕は考慮すべきです。問題になりそうな部分は、常に需要家とコミュニケーションを取り、落とし所を共有すべきです。太陽光発電に特有の注意点としては、設置の向きが適切か、周囲に建物や木があって影ができないか、パネルの反射光が近隣のクレームにならないかなどがあります。
補助金に関しては期待が大きすぎても問題ですので、補助金がなくても実現可能な計画と、補助金を利用できた場合の計画の両方を提案することが一般的です。
STEP 5 ― 電力会社にシステムの接続と連系についての申請を実施
自家消費型の導入では、電力会社の電力系統への接続を申請する「電力申請」が必要です。技術的に接続が可能か、可能なら必要な概算費用の算定を実施するものです。完全自家消費か余剰があれば売電するのか、6600Vを数百Vにするキュービクルという変圧器の有無などで申請方法が異なります。
STEP 6 ―対象の施設の停電時間内に工事を完了
施工では、現場を停電にする必要があります。土日だけで対応できるケースもあります。どちらにせよ短期間で確実に施工を完了させることが大切です。
ポイント3:施工やアフターケアを効率的に進めるには
事業所に発電設備を設置する場合は、稼働を止めずに済む土日の施工が一般的です。しかし土日だけで収まらない場合、事業が停止する可能性があり、その場合はペナルティが発生するリスクがあります。
太陽光発電は一種の発電所ですから、発電事業者としてのメンテナンスが必要であり、そのためにも最初に明確な保守契約を結ぶことは重要です。パワーコンディショナーは、10年から15年ごとに交換が必要ですから、長期の運用計画には費用を盛り込んでおく必要があります。このように運用費用を計算し、需要家に伝えておくことは重要です。
ただ保守は、需要家との接点にもなりますから、将来のビジネスチャンスでもあります。不良機器の交換だけでなく、パネルの増設、蓄電池の追加、EVの充電施設などアップセル、クロスセルの可能性も十分あります。
自社所有型と他社所有型(PPA)のメリット・デメリット
最近は「初期費用0円」で太陽光発電設備を提供するPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)が話題です。従来、発電設備は需要家が所有していましたが、PPAは設備を第3の企業が用意し需要家は場所を提供、発電した電力は需要家がPPA企業から購入するものです。もちろん自家消費型で利用できます。
PPAを利用する場合と利用しない場合を比較すると、まずトータルコストでは、自社で設備を用意する、つまりPPAを利用しない方が安くなります。PPAの場合は、事業者が電力価格に自分たちの利益を上乗せして設定するため、電気にかかる料金はPPAのほうが高くなります。自社設備の場合は、発電設備を投資に回せれば、税制面での優遇措置を受けられる可能性もあります。
PPAの最大のメリットは、発電設備の設置に初期費用が不要という点です。ですから需要家は、電力会社とPPAの電力料金を比較し、単純に安い方を選ぶだけで電力料金の削減が可能になります。またPPA事業者が10年・15年後に発電設備を無償譲渡してくれる場合もあります。そうなれば、以降の電力は実質無料になります。
EPC事業者として、PPAを提供するにはそれなりの資金が必要です。それは難しい、しかし需要家はPPAを望んでいるという場合は、実績あるPPA事業者と提携して提案を進めることが一つの解決策です。この場合、EPC事業者はPPA事業者に対して、自社ができる領域について支援する形で関わることになります。
自家消費型太陽光発電に参入するEPC事業者の注意点
発電設備の設置後初期の数ヶ月間は、契約不適合責任に対する補償期間を設定し、欠陥や不具合があったら無償で修理を行うのが一般的で、その期間を過ぎると有償での対応になります。この点を事前に需要家に説明しておかないと、補償期間が経過した後も無償での対応を求められ続け、結果として持ち出しコストが増加することになります。しかし業界には、保守契約の雛形やベストプラクティスがまだないため、弁護士等の専門家に相談し、専用の保守契約書を作成する必要があります。
オムロン製品の長期保証やサービスは、保証契約を結んだ需要家にはオンサイトで対応します。たとえば、パワーコンディショナーが故障した場合は、オムロンのサポートスタッフが現場に直接駆けつけて、その場で全部を交換します。他社の場合、メーカーから同等の製品が送られてくるものの、取り付けはEPC事業者が行うというセンドバック方式が一般的です。しかし、オムロンでは保障契約があれば、問題が生じた際もEPC事業者にその分の手間はかかりません。
またオムロンは業界唯一、発電設備の異常を検知し保護する保護継電器とパワーコンディショナーの両方を扱っています。この両者があると、電気が異様に変化したような場合でも、追従して自動で制御ができるので、EPC事業者に制御のノウハウがなくても発電設備を構築できます。
実際、自家消費型の設置は、一社だけで全てを賄うのが難しい場合が多く、様々な専門家が集まって一つの案件に対応することが一般的です。特に自家消費型では、発電した電気を電力会社に送る際に、キュービクル変圧器が必要な場合が多く、これを扱える人材は必須になります。
他社や必須の人材とどう出会うかは、過去の共同作業の経験を活かしたり、関連する専門家や技術者のネットワークを利用する方法があります。たとえば、全国にある電気保安協会は、技術者のネットワークを持っており、そこから適切な主任技術者を見つけて契約することも一つの方法です。
市場拡大の兆しがあり、自家消費型市場の参入は今がチャンス
自家消費型市場への参入は現在、門戸が開かれています。しかし市場の成長率は機器の生産能力や需要家のニーズより、今は施工業者の施工できる数に左右される部分が大きいと言えます。しかしお客さんのニーズは、施工できる数以上に高いと想像されます。特に去年夏のエネルギー価格の高騰から、市場の風向きは大きく変わりました。今こそ参入の良いタイミングだと思います。
また施工業者には、太陽光発電の設置に対する苦労は過去の話とお伝えしたいと思います。需要家のニーズも変わっていますし、補助金の手当てやシステムの容易さなども変化しました。今は、参入しやすい環境が整ったと言えます。
自家消費型は野立てと異なり、20年とか30年というスパンで長期的に需要家とコミットし、コミットした分だけのリターンを得られる市場です。ですからオムロン ソーシアルソリューションズの支援をどんどん活用いただいて、ぜひ自家消費型の市場に挑戦いただければと思います。
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