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自家消費市場の参入の成功と失敗から学ぶ。EPC事業者が目指すべき戦略
今後ますます拡大が見込まれる自家消費市場は、今が参入の好機です。しかし、せっかく市場に参入しても、事業が軌道に乗らず撤退する事業者は少なくありません。市場参入を成功させるには、過去の事例から成功の要因を学ぶことが重要です。今回は、自家消費市場への参入でよくみられる成功例・失敗例から、市場参入を成功に導く具体的な戦略とアクションプランについてお伝えします。
今こそ産業用自家消費市場参入のタイミング
電気代の高騰は、今や多くの企業で避けては通れない経営課題となっています。また、環境問題などの社会課題の解決を企業の社会的責任と捉える企業が増えており、再生可能エネルギー、中でも太陽光発電への関心が高まっています。そうした中、事業所などで発電した電気を自社の建物内で消費する「産業用自家消費」市場は今後拡大が見込まれており、今が参入の好機と言えます。
【ケーススタディ】自家消費市場参入の成功例と導入業界
自家消費市場の拡大を受け、市場に参入するEPC事業者が増えています。しかし、十分な準備のないまま太陽光発電の分野に進出し、撤退を余儀なくされる例もあります。市場に参入するには、相応の準備が必要です。ここで、市場参入を成功させたEPC事業者に共通するポイントと、自家消費の導入が進んでいる業界について紹介します。
(1)社会課題への強い信念と情熱
市場に参入し、成功するEPC事業者の共通点としてまず挙げられるのが、社会課題を解決したいという強い信念です。日本のエネルギー課題の解決に向けて情熱を持って取り組めるEPC事業者が、太陽光発電の導入を力強く推進している印象です。
(2)地域への貢献と地域活性化への取り組み
また、地域に貢献したい思いを持ったEPC事業者も同様です。エネルギーも食材と同じで、「地産地消」が一番です。外部から電力を買うのではなく、自分たちで電力を生み出し、消費することで、エネルギーコストを他に回すことができます。そうすることで地域の企業が潤い、やがて地域が活性化していきます。
(3)企業の社会的責任へのコミットメント
社会課題の解決や地域への貢献に取り組むEPC事業者は、企業の社会的責任への強いコミットメントが見られます。信念を持って自家消費システムの導入を進めることで社会的信用を得て、それが案件の獲得につながっていきます。
自家消費市場参入に当たって、EPC事業者の皆さんが気になっていることの1つに、どういった業界に自家消費の需要があるかが挙げられます。自家消費の需要が多い業界とその特徴は以下の通りです。
(1)スーパーマーケットやドラッグストアなど店舗
流通小売業では、利益率が低いため、エネルギーコストの上昇は経営に大きな影響を与えます。このため、自家消費の導入に対するニーズが高まっています。 また、スーパーマーケットやドラッグストアでは以下のような点が重要な課題となっています。
- 店舗内の快適な空気環境を保ちながら電気代を削減すること
- 停電時でもレジ機能を維持すること
- そして設備更新だけでは限界のある省エネ対策を強化すること
自家消費システムの導入は、これらの課題に対する有効な解決策となり得ます。太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用して自家消費することで、電気代の削減はもちろん、バックアップ電源としての役割も果たし、停電時のレジ機能維持にも貢献します。また、自家消費システムの導入は、単なる設備更新を超えた省エネ対策として、持続可能な店舗運営を実現する一助となります。そのため、スーパーマーケットやドラッグストアなど店舗では、自家消費の需要が多いといえるでしょう。
(2)介護業界
介護施設では多くの電力を必要とします。そこで問題となるのが、電気代の高騰です。介護施設としては、電気代が高騰してもサービス料に上乗せすることが難しいため、仕方なく人件費などで調整しなければなりません。そうなると、質の高い介護が提供しづらくなります。こうした悩みに対し、自家消費システムでエネルギーコストを一定に保つことを提案できます。
(3)学校など教育機関
自家消費は教育機関とも相性が良いと言えます。介護施設と同じく、エアコンの設置などにより電力消費量が増えた場合、授業料に上乗せすることは困難です。幼稚園では既に自家消費システムの導入が進んでおり、今後は小学校や中学校、高校などへの導入も進んでいくものと見られます。
(4)製造業の工場
製造業の工場は、消費電力量が多いこと、太陽光パネルを設置するのに十分な広さの屋根があることなどから、自家消費システム導入に向いています。ただし、導入提案の際は屋根の耐荷重を確認するようにしましょう。
上記に挙げた業界以外にも、データセンターや集合マンションの共用部分などでも自家消費システムのニーズは高いと考えられます。消費電力量が多く、同じ場所で10〜20年間自家消費システムを使用する見通しがあり、太陽光パネルを設置するのに十分な場所を備えた施設であれば、自家消費のニーズは高いものと思われます。そうした業界にアプローチすることで案件の獲得につなげましょう。
新規参入のEPC事業者が陥りがちな落とし穴とその回避策
一方で、失敗事例から学ぶことも大切です。EPC事業者が需要家に自家消費の導入を提案する際に注意すべき点や、実際に陥りがちな落とし穴とその回避策についてお話します。
(1)初期費用の見積もりの失敗
EPC事業者が陥りがちな落とし穴としてまず挙げられるのが、初期費用の見積もりの失敗です。例えば、自家消費システムをいざ設置する段階でケーブルの長さが足りず、ケーブルを引き回すためコストが上乗せされる場合などです。初期費用の見積もりを失敗すると、導入先企業の収益性が低下することになります。
周囲の建物の影や向きなどにより、当初のシミュレーションよりも発電量が低くなってしまい、エネルギーコストを削減できず、顧客から改善を求められたケースもあります。
こうした失敗を回避するためには、必ず電力量データなどのデータをもとにシミュレーションをすること、必ず現地調査を行い、施工の工事費の見積もり精度を上げることが重要です。
(2)制御の失敗
自家消費システムの運用では、発電量や消費パターンに基づく正確な制御が求められます。制御に失敗すると、運用コストや効率に影響が出る可能性があります。
精度高く制御を行うには、顧客が電力をどのように使っているか、使用パターンをよく理解し、適切な運用計画を策定するようにします。制御に関しては、経験や知識を持ったエンジニアでなければ分かりにくい部分があります。
OSSでは市場に新規参入したEPC事業者に対し、数件の施工をともにする中でノウハウをお伝えしたり、システム設計ガイドブックや施工動画などを提供したりし、スキル向上のサポートをしています。
成功の鍵は「信頼関係の構築と顧客ニーズの理解」
ここまで、自家消費市場参入の成功例・失敗例について紹介しましたが、一番の成功の鍵は顧客との信頼関係の構築とニーズの理解です。
自家消費は一度導入すると、10〜20年間同じシステムを使い続けます。EPC事業者と顧客はそれだけ長きに渡る付き合いになるため、信頼関係の構築は欠かせません。顧客との信頼関係が築かれれば、口コミなどによる横展開が期待でき、ビジネスにとっても有利です。
顧客と信頼関係を築くためには、上記で挙げたような失敗を回避すること。現地調査や工事費の見積もり、屋根の強度の確認、顧客の電力使用状況を確認することが重要です。
さらに、顧客ニーズをつかむという点では、導入初期からシステムの拡張性について考慮しておく必要があります。導入段階で拡張性を考慮しておかなければ、運用開始後にシステムを増設することになった場合、余分なコストがかかる可能性があります。
自家消費市場の新規参入者が取るべき戦略とは
新規参入者が既存の市場に参入し、競合との差別化を図るためには、自身のプレゼンスを高める必要があります。そのために取るべき戦略についてお話します。
(1)地域社会との協力強化
既に自家消費市場へ参入しているEPC事業者との差別化を図るには、地域社会との協力を強化することが効果的です。地域に貢献することで信頼が得やすく、案件が集まりやすくなります。地場の企業やネットワークを築き、地域貢献をすることで信頼が得られ、潜在的な案件が集まりやすくなります。また、自治体が提供する補助金の情報を得られたり、活用したりしやすくなります。
(2)公共と民間両方の案件を手掛ける
現在のようにエネルギーコストが高騰する以前は、自治体などが先行して再生可能エネルギーに投資していました。それがこの1年ほどで風向きが変わり、民間が先行して投資をし始めています。公共案件を扱うことで自治体とのネットワークを築き、補助金などのノウハウも蓄積されていきますが、一方で民間案件もこれから一層増えていくでしょう。そうした意味では、公共だけでなく民間も、両方手掛けられると強みになります。
自家消費市場が成長してきていると言っても、現状自家消費で充足できる電力は全体の3割程度です。残り7割は電力会社から電力を買って消費しています。再生可能エネルギーのみで100%電力がまかなえるようになれば、環境課題が解決に向かうのかもしれません。
しかし、そこに行き着くにはまだまだ試行錯誤が必要です。世の中の動向にアンテナを張り、自家消費そのものをアップデートすることで新規事業創出の機会も生まれるでしょう。
まとめ
産業用自家消費市場は拡大の一途をたどり、今が参入の絶好の機会です。成功の鍵は、社会課題への強い信念と情熱、地域への貢献、企業の社会的責任へのコミットメントです。新規参入者は、地域社会との協力を強化し、公共と民間の両方の案件を手掛けることで競合と差別化を図る必要があります。オムロン ソーシアルソリューションズは、これから成長が期待される自家消費市場への参入を検討するEPC事業者を支援します。
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