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太陽光発電の出力制御とは?最新の見通しと九州電力の最新動向を解説

2024.06.01
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2018年10月に九州電力で初めての太陽光発電の出力制御が行われました。その後、出力制御の機会は増えており、2022年以降は九州電力以外の地域にも拡大されました。出力制御が売電収益に与える影響は大きいです。太陽光発電所を運営している方は、そのルールをしっかりと理解し、運営計画に反映していく必要があります。

本記事では、出力制御の基礎知識から最新の見通し、注目度の高い九州電力の動向まで取り上げて詳しく解説します。太陽光発電の長期的な計画を立てる上では避けては通れない内容です。しっかりと理解して、将来の計画に活かしてください。

太陽光発電の出力制御とは?

出力制御とは、電力の需給バランスを保つために、発電量を一時的に抑制または停止する制度です。発電事業者は、電力会社からの出力制御要請を拒否することはできません。出力制御期間中は、発電事業者は電気を売ることができず、補償も受けられないため、売電収入の減少は避けられません。

対象は太陽光だけではなく、風力、火力、水力などすべての発電設備を含みます。まずは火力やバイオマスなど調整可能な発電設備が先に制御され、それでも需給バランスが取れない場合に、太陽光や風力が制御されます。出力制御は電力の安定供給に欠かせない制度ではありますが、発電事業者にとっては収入減につながる大きなリスクとなります。

需給バランスを保つことの重要性

電力システムの安定性を維持するためには、需給バランスを保つことが極めて重要です。電力の供給と需要は「同時同量」の原則で管理されているため、このバランスが崩れると多くの問題が発生します。需給バランスが崩れた際、供給量が需要量を超えると余剰電力が発生し、需要量が供給量を下回ると電力不足が生じます。

余剰電力が発生した場合、電力網の電圧や周波数に異常が起こりやすくなり、電子機器の故障や自動停止が頻発する可能性があります。特に、電力の不均衡が原因で大規模停電が発生する場合、社会的および経済的損失も甚大です。そのため、電力会社は24時間体制で電力の需給を監視し、必要に応じて発電量を調整することが求められます。

冷暖房の使用が増加する寒波や猛暑時には、発電量を増やして対応することが一般的ですが、それでも足りない場合は電力の融通や節電の呼びかけ、場合によっては計画停電を行うことがあります。逆に、供給過剰時には出力制御を行い、発電量を下げることが不可欠です。雨が降らないと河川の水不足による利用制限や、逆に洪水による災害が起こるのと同様に、電力供給においても需給バランスの調整は不測の事態を防ぐために必要不可欠です。

このため、需給バランスが「供給量 < 需要量」または「供給量 > 需要量」にならないよう、出力制御が重要な役割を果たしているのです。このような管理により、電力システム全体の安定が保たれ、信頼性の高い電力供給が可能となっています。

出力制御の優先順位

電力需給のバランスを保つために、出力制御には優先順位が設定されます。まず、出力が制御されるのは火力発電(ガス、石炭、石油)であり、次いで揚水や蓄電池が活用されます。これに続き、他地域への電力送電(連係線利用)が行われ、その次にバイオマス発電の出力調整が行われます。それでも解決しない場合には、太陽光発電および風力発電の出力制御が続きます。最後に、水力発電、原子力発電、地熱発電の出力が調節されます。太陽光発電は優先順位が低く設定されているものの、実態としてはそれでも多くの出力制御が行われているのが現状です。

出力制御の実施状況

出力制御の始まりは2018年10月に遡ります。初めて行われたのは、太陽光発電量が多い九州電力管内です。その後、実施範囲が徐々に拡大されていきました。2022年からは北海道エリアを皮切りに、東北、四国、中国の各エリアにも導入され、2023年には中部、関西、沖縄の各エリアにまで拡大し、東京電力を除く国内のほぼ全域で実施されるようになりました。

太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの生産量が増加するにつれて、将来的にも出力制御の必要性はさらに高まると予想されています。出力制御は再生可能エネルギーの安定的な運用と電力系統の安定化を図るための重要な施策であり、今後もその役割がますます重要になっていくと考えられます。

なぜ九州電力から出力制御が始まったのか?

九州地方は地理的特性や気候条件が太陽光発電に適しており、他の地域に比べて再生可能エネルギー、特に太陽光発電の導入が進んでいます。九州地方の電力需要は全国の約10%程度ですが、太陽光発電の導入量は1000万kWを超え、全国の約17%を占めています。日本全体で見ても電力需要に対する太陽光発電の割合が高いエリアとなっています。特に春や秋の休日やゴールデンウィークなど、電力需要が比較的低い時期には太陽光発電量が需要を上回ることがあります。このような背景から、九州電力で初めての出力制御が行われました。

今後の出力制御の見通し

2024年度の出力制御量は、2023年度の17.6億kWhから24.2億kWhまで拡大し、1.4倍に達する見通しです。24.2億kWhの電力量は、消費者の支払額ベースで約8121億5200万円に相当します。(平均電力料金33.56円/kWhを基準に計算。33.56円/kWh x 24.2億kWh)非常に大きな金額が抑制され、機会損失につながっていることが分かります。

出典元)再生可能エネルギーの出力制御の 抑制に向けた取組等について

出典元)Japan electricity prices

【九州電力】制御電力量、出力制御率の推移

九州電力の出力制御率の推移について見ていきましょう。年度別の制御電力量と出力制御率は以下の通りです。

年度 制御電力量 出力制御率
2018年度 1.0億kWh 0.9%
2019年度 4.6億kWh 4.0%
2020年度 4.0億kWh 2.9%
2021年度 5.3億kWh 3.9%
2022年度 4.5億kWh 3.0%
2023年度(見込み) 10.3億kWh 6.7%
2024年度(見込み) 10億kWh 6.1%

2024年度には少し下がるものの、依然として6.1%と高い水準を維持する見込みとなっています。全国で初めて出力制御を行った電力会社ということもあって、今後の動向に注目が集まっています。

出典元)再生可能エネルギーの出力制御の 抑制に向けた取組等について

【九州電力】2022年12月以降に実施している出力制御への取り組み

九州電力は2022年12月より、出力制御の方法を改定しました。これは、増加する再生可能エネルギーへの対応が主な理由です。改定後の新規定では、従来出力制御の対象外だった500kW未満の太陽光発電設備も、制御の対象となりました。また、30日間補償のないルールが適用され、出力制御量の削減と運用効率の向上が見込まれています。

さらに、新たな「オンライン代理制御」制度が導入されました。これにより、オフラインの発電所に代わってオンラインの発電所が出力を調整することになります。この新制度は、出力制御量を削減するだけでなく、事業者間の公平性を保つ目的も持っています。九州電力のこの取り組みは、将来の再生可能エネルギーの導入拡大をサポートし、エネルギー供給を安定化するという重要な役割を担っています。

出力制御量が増え続ける背景

近年、全国的に出力制御量が増加しています。その背景には、再生可能エネルギーの導入拡大や電力需給バランスの調整などが影響しています。

1.電気料金の高騰による節電

電気料金の高騰が節電への意識を高めています。特にウクライナ情勢の影響で、電気料金はさらに上昇し、これが電力需要の減少に繋がっています。この需要の減少は、供給の抑制である、出力制御量の増加に直結します。

2.他地域への送電量の減少

全国的に電力の供給が過剰になる中、出力制御において2番目に優先順位の高い「他地域への送電」を行うことが困難になっています。その理由は、他地域でも電力需要がないため、送電を受ける余裕がないからです。その結果、「他地域への送電」で解消できる制限量が減少し、太陽光発電や風力発電の出力制御量が増加しています。

3.再生可能エネルギーの増加

出力制御量の増加は、主に再生可能エネルギーの導入増加に由来します。東日本大震災後、日本は脱原発を進め、カーボンニュートラルの目標も掲げています。これにより、再エネの比率は将来的に現在の約10%から36-38%へと引き上げる計画です。再エネは、環境に優しいクリーンな電源として位置づけられ、エネルギー政策において中心的な役割を担っています。

しかし、自然から得るエネルギーであるため、発電量の調整が難しいのが実情です。特に需要が低い時には、過剰な発電が問題となることがあります。この問題を解消するためには、全国的な出力制御が必要とされています。需給バランスを保ちながら、効率的な管理と最適化を行えるようにすることが今後の大きな課題です。再エネの普及とともに、その制御技術の進化も急務であると言えるでしょう。

出力制御につながる再生可能エネルギーの増加

再生可能エネルギーの増加は、主に太陽光発電と風力発電からの供給増によってもたらされています。特に、最小需要時に再エネの割合が電力供給全体に占める比率が高くなります。最小需要時とは、4月末から5月初旬の休日や、沖縄では3月に特徴が見られる時期で、電力需要が通常より低くなる時期です。そのため、各電力会社は、最小需要時の電力需給バランスを考慮しながら、再生可能エネルギーの増加へと戦略的に取り組んでいます。

【九州電力】再生可能エネルギーの推移

九州電力エリアでは、2011年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーの導入量が年々増加しています。特に太陽光発電と風力発電の普及が顕著であり、2016年度には初めて、地域の最小需要量(726万Kw)を超える746万Kw発電となりました。

この増加傾向はその後も続き、2018年以降、供給過剰により出力制御の必要性が生じています。2023年には、導入されている再生可能エネルギーは最小需要量の約1.6倍に達しており、その管理が重要な課題となっています。以下に、九州電力エリアにおける再生可能エネルギーの導入量の推移を示します。

年度 風力(万Kw) 太陽光(万Kw) 合計(万Kw)
2011年度 41 74 115
2012年度 43 111 154
2013年度 43 271 314
2014年度 46 471 517
2015年度 47 616 663
2016年度 49 697 746
2017年度 50 785 835
2018年度 51 853 904
2019年度 58 944 1,002
2020年度 59 1,029 1,088
2021年度 63 1,091 1,154
2022年度 60 1,156 1,216
2023年度 61 1,186 1,247

出典元)再生可能エネルギーの出力制御の 抑制に向けた取組等について

出力制御の要請は拒否できない

出力制御の実施により、FIT認定事業者は売電収入の減少を余儀なくされます。当然ながら、要請に従う必要性に疑問を感じる方もいらっしゃいます。しかし、再エネ特措法により、出力制御の要請には法的に従う義務があるのです。この法律に定められた義務を遵守することで、FITの認定を維持できます。したがって、事業者は出力制御の要請に従わなければなりません。この法的義務により、エネルギー供給の安定性と再生可能エネルギーの効率的利用が保たれています。

出力制御の補償ルール

太陽光発電所における出力制御は、特定の「補償ルール」に基づいて行われます。「旧ルール」「新ルール」「無制限無補償ルール」の3つが存在し、それぞれ適用条件が異なります。旧ルールでは、31日以降の出力制御に対して補償が提供されますが、新ルールでは361時間以降の出力制御に対して補償が受けられます。一方、無制限無補償ルールでは、出力制御に関する時間制限がなく、補償も提供されません。

適用されるルールは各電力会社によって設定されており、接続申込日や出力規模に応じて条件が異なります。正確な情報は各電力会社の公式ページで最新の情報を確認することが重要です。

旧ルール(30日ルール)

出力制御の補償に関する旧ルール、通称「30日ルール」は、年間で出力制御の日数が30日を超える場合に適用されます。このルールにより、31日目以降の売電収入が補償される仕組みです。一方で、年間30日までの出力制御は補償されません。この「30日ルール」という呼称は、補償が開始される31日目から適用されることに由来しています。

新ルール(360時間ルール)

2015年のFIT制度(固定価格買取制度)の改定に伴い、新たな「360時間ルール」が導入されました。このルールでは、年間の出力制御時間が360時間を超える場合、それを超過した時間についての売電収入が補償されます。従来の「30日ルール」では、出力制御された時間を問わず1日とカウントしていたため、実際の制御時間を正確に計算するのが難しい状況でした。新ルールの導入により、時間単位での出力制御が可能となり、運用の精度が向上しました。ただし、この新ルールの適用は、エリアや接続申込日、出力規模によって異なる場合があるため、注意が必要です。

旧ルールと新ルールはどちらがお得?

出力制御の補償ルールについて、新ルールと旧ルールには大きな違いがあります。旧ルールでは、たとえ1時間の出力制御でも、その日が補償対象となります。例えば、30日間毎日1時間ずつ制御された場合、30日分としてカウントされ、以降の売電収入が保証されるため、利用者に有利な条件となっています。一方、新ルールでは、年間360時間の出力制御が補償対象の条件であり、30日目の補填を受けるには1日平均12時間(360時間÷30日)の制御が必要です。太陽光発電は主に日中に行われるため、12時間の長時間出力制御は現実的ではなく、補償を受けるケースは少なくなります。さらに、技術進化により出力制御時間が短縮傾向にあり、新ルール下での補償条件を満たすのは一層困難になると予想されます。

1日平均2〜3時間の出力制御の場合、旧ルールでは補償を受けられる可能性が高く、発電事業者にとっては有利と言えます。

無制限無補償ルール(指定ルール)

新たに制定された「無制限無補償ルール」は、もともと「指定ルール」と呼ばれ、国が指定した特定の電力会社の管轄内で限定して適用されていました。2021年4月からは、管轄の制限が撤廃され、どの電力会社でも適用できるようになりました。このルールでは、出力制御が行われる時間に上限がなく、出力制御中の収入についても補償がありません。補償がないことで、発電収入の不確実性が高まり、発電事業者はリスクが増加します。適用対象は、発電所の立地するエリア、接続申込日、出力規模に依存しており、特に最近申し込みを行った発電所が中心となっています。

まとめ

太陽光発電の出力制御は、電力システムの安定性を維持するために重要な需給バランスを保つことを目的として行われています。近年、出力制御は増加傾向にあり、2024年度にはさらに拡大される予測です。2023年度と比べて約1.4倍の出力制御量が実施される見通しであり、太陽光発電の収益に与える影響は大きいでしょう。そのため、今後の見通しを正しく理解し、発電所の運営計画に活かしていくことが重要です。また、電力会社によって細かい状況やルールは異なるため、全国的な動向だけでなく、売電先である電力会社の個別の状況もしっかりと把握する必要があります。

各事業者の対策としてはどのような対策が有効なのでしょうか。例えば、FIT制度からFIP制度への切り替えが考えられます。FIP制度では、FIT制度の固定価格買取とは異なり、市場価格によって売電価格が変動します。FIP制度においても出力制御が実施されることは変わりませんが、市場の状況に基づいて発電出力を最適化することができるため、出力制御の影響を受けにくくできる可能性があります。

他の対策としては、オンライン出力制御への対応が挙げられます。対応することで、電力会社からの出力制御の要請に対して、最小限の制御に抑えることが可能になります。オンライン出力制御に関する詳しい情報は関連ページ「出力制御対応とは」よりご覧ください。

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