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個人が太陽光発電で売電した場合、インボイス制度への登録は必要?ケース別に詳しく解説

2024.06.01
お役立ち情報

2023年10月1日より、インボイス制度が開始されました。この制度は法人だけでなく、FIT制度(全量売電)を利用して売電している個人にも影響があります。既に売電している方だけでなく、まだ始めていない、これから太陽光発電の導入を計画している方も、この制度による消費税の影響を把握しておきましょう。

本記事では、消費税とインボイスの基礎的な理解からはじめ、状況別にインボイス登録の必要性の有無まで詳しく解説します。個人で太陽光発電を行い売電している方や、これから始める方はぜひ参考にしてください。

消費税とは?

まずは前提となる消費税について正しく理解を深めましょう。消費税とは、事業者が納付義務を負う税金で、様々な商品やサービスに課されます。例えば、スーパーで販売される野菜なども消費税の対象となり、購入時には購入料金に消費税が上乗せされます。つまり、消費者は消費税込みの料金を支払うことになるのです。一方、事業者は受け取った消費税を国に納付しなければなりません。このように、消費税は間接税の一種であり、最終的には消費者が負担することになっています。

課税事業者と免税事業者の違い

消費税は、課税事業者の場合には納付義務がありますが、免税事業者にはその義務はありません。課税事業者とは、年間の課税売上が1,000万円を超える法人や個人のことを指します。この基準を満たす事業者は消費税を納付しなければなりません。一方、免税事業者は年間売上が1,000万円以下の事業者を指します。免税事業者の場合、受け取った消費税の納付は不要となります。ただし、免税事業者であっても任意で課税事業者に切り替えることは可能です。

あえて課税事業者になる主な動機の一つは、消費税の還付を受けられることです。消費税の還付とは、受け取った消費税額が支払った消費税額を上回った場合に、その差額が還付される制度のことです。特に太陽光発電事業を始める際には、初期に高額な発電設備費が発生するため、売上が1,000万円以下でも意図的に課税事業者として登録しておくと、受け取った消費税を納付するデメリットよりも、還付金を受け取るメリットの方が大きくなります。

その後、売上が1,000万円以下の期間が続く場合には、消費税課税事業者選択不適用届出書を提出することで、改めて免税事業者へ戻ることも可能です。事業者には、課税事業者と免税事業者のいずれのステータスが最適かを判断することが求められます。事業規模だけではなく、届出書の提出期限や適用年度、中期的な収支計画など様々な要件を考慮して、自社にとって最適な選択を検討しましょう。

仕入税額控除の仕組み

消費税は、商品やサービスが提供される際に課される税金です。この税金は課税事業者が顧客から受け取りますが、同時に事業者は自身の仕入れにかかった消費税を後で控除することが可能です。この制度を「仕入税額控除」と呼びます。事業者が支払う消費税の額は、売上に対して受け取った消費税から、商品の仕入れ等によって支払った消費税を差し引いた金額になります。

例えば、ある商品を税込11,000円(税抜価格10,000円+消費税1,000円)で販売した場合を考えます。もし販売した商品の仕入れに、500円の消費税がかかっていたのであれば、その事業者が納めるべき消費税は500円(販売時に受け取った消費税1000円 - 仕入れ時に支払った消費税500円)と計算されます。仕入税額控除によって事業者の負担が軽減され、経済的な利益にもつながります。

このシステムは、事業者が税の二重負担を避け、実際に負担する税額を公平に保つための重要な役割を果たしています。

インボイス制度とは?

2023年10月1日からスタートしたインボイス制度は、正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれます。この制度は、消費税の複数税率に対応するために設計されたもので、商品やサービスごとに標準税率10%と軽減税率8%のいずれかが適用されます。

この新しい制度の下では、課税事業者が適格請求書を発行して、これを保存することで、仕入れた商品やサービスにかかる消費税を仕入税額控除として計上することができます。しかし、適格請求書を発行する権利は、国税庁に登録して承認された事業者のみが有しています。そのため、登録済みの事業者からの仕入れに関してのみ、消費税の控除が可能です。

一方で、適格請求書発行事業者に未登録の事業者から仕入れた場合には、消費税の控除は認められず、事業運営において不利益を受ける可能性があります。この点がインボイス制度の重要な特徴の一つです。また、免税事業者が適格請求書を発行したい場合には、まず課税事業者として登録する必要があります。

インボイス制度は、消費税制度の透明性を高め、正確な税額の申告と納税を促進することを目的としています。適格請求書がないと仕入税額控除が適用されないため、消費税の流れをより正確に把握することができるのです。これにより、税逃れの防止だけでなく、適正な消費税の流通を支援することが期待されています。すべての事業者に対して、この制度への理解と適切な対応が求められています。

インボイス制度が開始する前のケース

インボイス制度への理解を深めるため、事例を使って解説します。対象は太陽光発電を事業として行う一般的なケースです。ここで考えるのは、インボイス制度が開始した令和5年9月30日以前の取引の流れです。

具体的な例として、認定発電事業者が発電したFIT電気を考えます。この電気を電力会社が税込11,000円(税抜価格10,000円+消費税1,000円)で購入して、その後、消費者にも同額で販売したとします。この場合の電力会社の税務処理を見てみましょう。

電力会社は消費者から11,000円を受け取ります。その内の1,000円は消費税です。この消費税1,000円は国への納税義務があります。一方で、電力会社は発電事業者から電気を購入する際にも1,000円の消費税を支払っています。通常、支払った消費税は購入時の消費税として、税務上の仕訳において差し引くことができます。

この結果、電力会社は消費者から受け取った消費税と発電事業者へ支払った消費税が相殺されるため、実質的な納税額はゼロとなります。つまり、電力会社は追加で消費税を負担することはありませんでした。

インボイス制度が開始した後のケース

インボイス制度開始後の令和5年10月1日以降、電力会社が負担する消費税額は、認定発電事業者側の状況によって変化します。認定発電事業者が適格請求書発行事業者である場合、電力会社は支払った消費税額の全額を控除できますが、そうでない場合は控除できる消費税額が減少するため、電力会社の負担が増加することになります。それぞれのケースで詳しく解説してきます。

適格請求書発行事業者のケース

インボイス制度の開始後、適格請求書発行事業者の認定を受けている場合は、制度開始前と同様の状況といえます。電力会社は発電事業者から電気を購入する際に支払った消費税を差し引くことができるため、電力会社の実質的な納税額は0円となります。

適格請求書発行事業者ではないケース

一方で、インボイス制度が開始した後、発電事業者が適格請求書発行事業者に該当しない場合には注意が必要です。例えば、電力会社が適格請求書発行事業者に該当しない発電事業者からFIT電気を税込11,000円(税抜価格10,000円+消費税1,000円)で購入した場合、仕入れた消費税額(1,000円)を控除することができません。その結果、電力会社は消費者に電気を税込11,000円(税抜価格10,000円+消費税1,000円)で販売する際、預かった消費税額1,000円を全額納税しなければなりません。これは、認定発電事業者が適格請求書発行事業者である場合と比べて、1,000円の損失が生じることを意味します。

すぐにそのような事態が生じてしまうと適格請求書発行事業者ではない場合の影響が大きくなってしまうため、段階的な経過措置が設けられています。インボイス制度導入初期においては、全ての事業者が即座に仕入税額控除ができなくなるわけではありません。導入後最初の3年間は税額の80%を控除でき、次の3年間は50%の控除が可能です。しかし、6年目以降は仕入税額控除が全くできなくなるため、事業者の負担がさらに増加することになります。

インボイス制度に未登録であることのリスク

FIT制度の認定を受けずに、電力会社と相対・自由契約をしている場合(非FIT)、インボイス制度に未登録の課税事業者や免税事業者にはリスクが存在します。それは、買い手側からの取引の見直しや仕入れ額の変更です。FIT認定は一定価格での買取を保証する制度なので、認定を受けている事業者については、買取条件の見直しは行われません。しかし、認定を受けていない場合(非FIT)には、条件が見直される可能性があるのです。

買い手側からすると、インボイス制度への未登録事業者から商品やサービスを仕入れた場合、仕入税額控除の適用を受けられないため、結果としてコストの増加に繋がります。このため、買い手側はコスト削減を目的として、インボイス制度に登録している業者からの仕入れを優先する可能性(取引の見直し)や、仕入れ額の抑制(仕入れ額の変更)に動く可能性があります。

こういった動きは、特に中小企業や免税事業者にとって大きな影響を及ぼすでしょう。非FITの場合には、リスクを避けるためにも、インボイス制度への登録や申請の検討を進める必要があります。対応が遅れると取引先を失うなどの深刻な事態に陥る可能性もあるため、早期の対策が求められます。

なお、既にFIT認定を受けている課税事業者の場合には大きな影響はありません。現時点(2024年7月16日時点)では、経済産業省よりインボイス制度への登録を促されていますが、未登録であっても罰則はありません。

個人で売電している場合

個人であっても、産業用太陽光システムを保有して電力会社と継続的な売電契約を結んでいる場合には、消費税の課税対象となります。事業としての要件を満たすため、インボイス登録も必要です。ただし、例外的なケースもあります。

例外的なケース

事業とはみなされない場合

個人が自宅に太陽光発電設備を設置して、余剰電力を電力会社へ売却する場合には特別な扱いとなります。一般的に、このような行為は事業活動とはみなされないため、消費税の徴収対象外となるのです。この取引は、日常生活の中で使われる電力のうち、使用しきれなかった分を売ることに留まります。そのため、「生活用資産の譲渡」と考えられ、事業としての取引ではないとされています。

結果として、自宅で発電した電力の余剰分を電力会社に売却する場合には消費税を納める必要はありません。これについては国税庁も資料で明記しており、この類の取引はインボイス登録の必要もないことも示されています。このことは税務上の処理が大きく簡素化されることを意味しており、個人が太陽光発電で余剰電力を売る行為を奨励していると考えられています。

既にFIT認定を受けている場合

既にFIT認定を受けている課税事業者であれば、インボイス制度への登録が促されています。しかし、現時点(2024年7月16日時点)では、未登録であっても罰則はありません。また、免税事業者の場合には、インボイス制度への登録は不要です。インボイス制度への登録がなくても、現行の買取価格が変更されることはありませんのでご安心ください。従来通りの取引を続けることが可能です。

ただし、免税事業者であっても太陽光発電以外の他の事業展開に伴い課税事業者に該当する場合や、将来的に課税事業者になる予定がある方は、将来の税務上のリスクを回避して安定した事業運営を確保するためにも、インボイス制度への登録をご検討ください。

これからFIT・FIP認定を受ける場合

続いて、太陽光発電を行っている事業者全般の話について解説しておきたいと思います。太陽光発電事業に投資する際は、FITやFIPの認定が重要なポイントです。認定を受ける際には、インボイス制度への登録が必要なのでしょうか。ケース毎にみていきましょう。

課税事業者のケース

資源エネルギー庁の新しい計画によると、課税事業者がFIT制度(固定価格買取制度)やFIP制度(制度固定価格買取プレミアム制度)の認定を受ける場合、インボイス制度への登録が必須となります。この登録を行うことで、FIT電気を購入する際に電力会社側の税負担も軽減されるため、協力するメリットが課税事業者にも生まれます。

インボイス制度に登録した事業者は、登録後にその番号を電力会社に報告する必要がありますが、その後の手続きは簡略化されています。電力会社は「受給料金のお知らせ」をインボイスとして扱うため、FIT認定事業者が個別にインボイスを発行する必要はありません。

また、FITやFIPの価格設定については、課税事業者かどうかに関わらず、変更はありません。この一貫した価格政策が、安定したエネルギー供給を支える要因となっています。課税事業者がFITやFIPの認定を受けたいと考えている場合、インボイス登録はそのプロセスにおいて重要なステップです。関連する手続きやルールをしっかりと把握して、適切に対応を進めることが求められます。

免税事業者のケース

FITやFIPの認定を受ける際、消費税の納税義務に関連するインボイス制度の登録は必須ではないため、未登録でも認定可能であり、FIT価格にも影響しません。これは、太陽光発電を含む再生可能エネルギーの利用促進を目的とした制度だからと考えられます。インボイス制度へ登録をしなくても始められることで、新たに事業を開始するための初期負担が軽減されています。

適格請求書発行事業者になるには?

適格請求書発行事業者に認定されるまでの手順を解説します。

登録申請書の提出

まずは登録申請書を納税地の所轄税務署に提出します。申請方法としては郵送またはe-taxの利用が可能です。基本的な申請書類の他に、個人事業者の場合は本人確認書類、法人の場合は登記事項証明書などが必要となります。提出書類に不備があると受理されないので、十分に注意しましょう。申請が受理されると「適格請求書発行事業者登録簿」に登載され、登録番号が付与されます。

登録通知書の送付

インボイス登録センターから送付されてくる登録通知書には、適格請求書発行事業者の登録番号や公表情報が記載されています。通常、登録通知書の到着には2週間程度かかりますが、場合によっては1週間以内に届くこともあるでしょう。

この通知書を受け取った後は、登録内容に誤りがないかを慎重にチェックしてください。問題がないことを確認して、次の手続きに進みましょう。特に、令和5年10月1日から適用された新しい制度において、登録番号を記載した請求書を取引先に発行する予定がある事業者は、できるだけ早めに手続きを行うことが推奨されます。

登録番号の報告

最後に、適格請求書発行事業者として認定されたい会社は、電力会社に対して登録番号を報告しなければなりません。この手続きの詳細は電力会社によって異なるため、対象となる電力会社のホームページで最新情報を確認して、ミスのないように対応しましょう。

まとめ

インボイス制度は、2023年10月1日から開始された新たな制度です。消費税の適正な管理を目的としています。この制度により、消費税の仕入れ額控除を受けたい事業者は登録が必須となり、課税事業者は「適格請求書発行事業者」になる必要があります。

しかし、個人が太陽光発電で売電している場合においては、必ずしもインボイス制度への登録は必要ではありません。事業としての売電でなければ登録は不要です。事業として行っている場合には、この制度に登録することにより、税務上のメリットを享受することができるでしょう。最適な選択は個々の状況により異なります。本記事の内容も参考にしていただき、検討してください。

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