太陽光発電で売電収入を得た際に、確定申告は必要?ケース別に詳しく解説
太陽光発電から得られた売電収入がある場合、確定申告が必要かどうかはそれぞれの状況によって異なります。一般的に、自宅で余った電力を売る場合や、太陽光発電を事業として運営している場合は、得られた収入に対して申告が必要です。申告の際には、収入の計算方法や必要経費に関する専門知識が求められます。十分に学び、方法を理解した上で進めていきましょう。
本記事では、売電方法毎に異なる確定申告の必要性や、所得区分、確定申告のプロセスまで詳しく解説します。適切な申告を行うことで、トラブルを避け、安心して売電収入を得られるようになりましょう。
確定申告とは?
確定申告とは、1年間(1月1日から12月31日まで)に得た所得に基づいて所得税を計算して、翌年の2月16日から3月15日までに税務署へ申告、納税する手続きを指します。この手続きを通じて、その年の所得とそれに応じた税額が正式に決定されます。
会社員や給与所得者の場合には、原則給与から源泉徴収されるため、通常は年末調整で税額の調節が行われ、個別の確定申告が不要な場合が多いです。ただし、追加の所得がある場合や特定の控除を申請する必要がある時は、確定申告が必要となることもあります。例えば、太陽光発電で得た収入もこれに該当します。確定申告の手続きは、期限内に直接税務署に書類を提出する方法と、e-Taxを利用してオンラインで行う方法があります。どちらの方法も利用者の便宜に応じて選択が可能です。
売電収入を得た際に、確定申告が必要となる条件
太陽光発電システムは、出力容量によって住宅用と産業用に区分されます。出力容量が10kW未満の場合は住宅用、10kW以上の場合は産業用として区別され、それぞれで買取価格や買取期間に違いが生じます。売電収入に応じて確定申告の必要性が変わり、売電収入が一定額を超えると確定申告が必要となります。一般的に、住宅用太陽光発電の場合、売電収入が少なく確定申告が不要なケースが多いです。
一方、産業用太陽光発電では、売電収入が多いため確定申告が求められることが多いです。具体的には、太陽光発電による売電収入から経費(太陽光発電の導入費用や維持費など)を差し引いた年間の所得が20万円を超える場合、確定申告が必要となります。なお、売電収入以外に雑所得などがある場合には、売電収入の所得と合算すると確定申告が必要になるケースもあります。ご注意ください。
住宅用太陽光発電(発電量10kW未満)の場合
発電量が10kW未満の住宅用太陽光発電システムの場合、売電による所得が年間20万円を超えることは珍しいため、通常は確定申告の必要がありません。ただし、会社員や年末調整の対象者であっても、副業や投資による所得と売電収入の所得の合計が年間20万円を超える場合には、確定申告が必要になります。
一方、個人事業主として太陽光発電を行っていて、売電収入が事業所得に該当する場合には、異なるルールが適用されます。売電収入以外の他の事業収入とも合わせた所得が年間38万円を超える場合、確定申告が必要となります。38万円の基礎控除額を超えるので、所得税がかかるためです。
例外的なケース
住宅用太陽光発電システムから得られる年間の所得が20万円以下であっても、特定の条件下では確定申告が必要になることがあります。例えば、年間の給与収入が2,000万円以上の会社員です。会社で年末調整が行われないため、個人で確定申告をする必要があります。
また、払いすぎた所得税を返還してもらう「還付申告」を行う場合には、確定申告が必要となります。還付申告の際は、申告書の提出期限が翌年1月1日から起算して5年以内であることに注意が必要です。加えて、副業などで売電収入以外にも収入がある場合、合計した所得金額が20万円を超えると確定申告が必要となります。これらのケースでは、売電収入の金額に関わらず、税務申告を行う必要があることを理解しましょう。
産業用太陽光発電(発電量10kW以上)の場合
発電量が10kW以上の産業用太陽光発電システムの場合、売電による所得が年間20万円を上回り、確定申告が必要になるケースが多くなってくるでしょう。個人事業主として売電収入が事業所得とみなされる場合、基礎控除額38万円を超える所得があれば確定申告が必要となります。事業所得とみなされる条件は、発電量が50kW以上であるか、設備にフェンスなどの適切な管理設備を設置している場合です。ただし、所得が38万円以下であれば、基礎控除により確定申告の必要はありません。
確定申告は不要だが、住民税の申告が必要な場合
売電収入を得た際の確定申告の必要性は、一定の条件によって判断されます。しかし、確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要となるケースがあります。例えば、国民健康保険の加入者や国民年金の加入者、介護保険や後期高齢者医療保険の加入者、児童手当や就学援助を受けている家庭の方が、非課税対象者として各種控除を受けるには、住民税の申告が求められます。
さらに、税務上での課税・非課税証明が必要な人も、この義務が生じます。申告の手続きは自治体により異なるため、該当する方は自身が属する自治体へ確認しましょう。このように、収入がある場合はその用途に応じて適切な申告が求められることが多いです。
確定申告に必要な手続き
太陽光発電設備の設置を行った場合、確定申告はいくつかの重要な手続きを必要とします。例えば、売電収入を示す書類と運用経費の領収書、設備契約書、保険内容書類、さらにはパワーコンディショナーの電気代納付書などの関連書類が必要です。これらの書類は、売電収入や関連経費を計算し、正確な申告をするために不可欠です。
次に、確定申告の提出方法は大きく3種類です。税務署に直接持ち込む、郵送で送る、またはe-Taxを使ってインターネット上で行うことができます。どの方法を選択するかは、個々の状況により異なりますが、作業の手間を省くことが可能なe-Taxが人気です。
確定申告書の作成には専門的な知識が求められます。国税庁のホームページを活用して進めていきましょう。ホームページ内のサービスを利用すると、給与所得者であれば源泉徴収票を基に必要事項を簡単に記入して進めることができるようになっています。太陽光発電の売電収入は雑所得として申告します。他にも、医療費や社会保険料、土地取引の書類も準備しておきましょう。申告の際は、必要書類を漏れなく揃え、期限内に手続きを行うことが重要です。
確定申告が必要にも関わらず、申告しなかった場合
確定申告を怠ると重大なペナルティが課せられる場合があります。申告期限を過ぎてしまうと、「延滞税」の支払いが必要となり、さらに「無申告加算税」が課される可能性もあります。これらのペナルティは申告が遅れるほど金額が増加するため、早めの対応が重要です。もし期限内に申告を忘れてしまった場合は、速やかに申告手続きを進めることが推奨されます。申告が遅れれば遅れるほど、支払う税金や加算税の額が増えてしまうことを肝に銘じておきましょう。
太陽光発電の売電収入で得た所得の区分
所得税を計算する際、太陽光発電からの収入は雑所得、事業所得、不動産所得の3つのいずれかに分類されます。この分類は、その太陽光発電システムの利用目的や設備の形態によって決まります。設備がどのように使われているかにより適用される税率も異なり、それによって税金の額が決定されるため、非常に重要です。
これらの所得は、他の所得と合わせて総合課税の対象となります。つまり、他の収入と合算して総所得が計算され、その総所得に基づいて所得税が計算されるのです。そのため、太陽光発電からの収入に関して正しい所得の区分を理解し、税務申告を行う際には適正な申告が求められます。
あなたの場合にはどの区分に該当するのか、それぞれ詳しく解説していきます。
事業所得
太陽光発電から得られる所得が事業所得に該当するかは、その実態が事業として認められるかによります。個人事業主や法人が太陽光発電を継続的に行い、対価を得る場合、売電所得は事業所得とされます。一方、個人が普段の生活の範囲で売電活動を行っている場合、一般に事業所得にはなりません。ただし、発電設備の規模が大きく、10kW以上で産業用とみなされる場合、年間所得が20万円を超えれば事業所得とみなされることがあります。
会社員が副業として太陽光発電事業を行う場合も、事業所得に該当する可能性があります。事業所得と認定されるためには、設備が社会通念上で事業と認められる程度の規模であること、適切な保守や管理を行っていることが必要です。たとえ設備が50kW未満であっても、事業としての体裁を整えていれば、事業所得として扱われる可能性があります。
事業所得に該当する場合、38万円を超える所得があれば、確定申告が必要です。太陽光発電による売電収入の所得区分については、設備の規模や管理状況、売電収入の金額などを総合的に判断する必要があります。具体的な状況や疑問点については、所轄の税務署へ相談して、適切な申告を行いましょう。判断に自信がないときには専門家のアドバイスを受けることが大切です。
不動産所得
不動産所得とは、土地や建物の貸付けから得られる収入です。賃貸物件からの収入もこれに含まれます。例えば、賃貸アパートの屋根や屋上に太陽光発電設備を設置し、その電力を賃貸住宅の共用部分で使用した場合、発生した収入は不動産所得として扱われ、余剰電力の売却収入も不動産事業に付随するものとして不動産所得に算入されます。
一方、賃貸物件の屋上に設置された太陽光発電設備で発電した電力を全量販売し、賃貸住宅の共用部分では一切使用しない場合は、事業所得や雑所得に該当します。つまり、太陽光発電による所得が不動産所得となるか否かは、発電した電力の使用方法や、その電力が賃貸物件とどのように関連しているかによって決まります。
したがって、太陽光発電で得た収入を適切に申告するためには、発電した電力の使用状況を正確に把握し、それに基づいて所得区分を判断することが重要となります。
雑所得
所得税法に基づき定義される所得区分の一つである雑所得は、他の9つのカテゴリに該当しない収入のことです。例として、10kW未満の太陽光パネルを自宅の屋根に設置して、その売電から得られる収入は、主な収益活動とみなされないため、通常は雑所得として扱われます。この売電所得に対する課税は、必要な経費を差し引いた後の金額が対象となります。そして、年間で20万円未満の場合には、確定申告の義務が免除されます。
一方、太陽光発電をビジネスとして本格的に行う場合や、賃貸物件の屋根を利用して太陽光パネルからの発電を行う場合、これは事業所得や不動産所得として扱われる可能性が高いです。
雑所得の計算方法
太陽光発電における売電収入から雑所得を計算するには、年間の収入から必要経費を差し引きます。仮に年間売電収入が40万円で、10kWの太陽光発電設備が500万円で設計された場合を想定して計算してみましょう。
経費の計算には定額法を使用して、減価償却率は0.059を適用するものとします。年間発電量が12,000kWhであり、そのうち9,000kWhが売電された場合、売電収入の割合は約0.75となります。この場合、経費を計算するには、500万円の設備投資額に減価償却率0.059と売電収入割合0.75を掛け合わせます。結果として、経費は221,250円と計算されます。この必要経費を年間売電収入40万円から差し引くことで、雑所得は178,750円と導き出されます。
以上の方法により、太陽光発電による売電収入から実際の雑所得を正確に算出することが可能となります。ただし、計算に用いる数値は個別のケースによって異なるため、実際の申告の際には各自の状況に合わせた数値を用いる必要があります。
太陽光発電の必要経費
太陽光発電システムを導入する際の必要経費とは、税務上認められる特定の費用を指します。これには設備の購入費用や、そのメンテナンス費用など、運用に直接必要なものが含まれています。正しく経費を計上することは、税額を適切に算出し、確定申告を正しく行うために不可欠です。経費を適切に把握し管理することは、太陽光発電投資の収益姓の向上にも繋がるでしょう。経費毎に詳しく解説していきます。
メンテナンス費
太陽光発電設備をメンテナンスするには様々な経費が発生しますが、税務上、これらは必要経費として計上できます。義務的な法律による点検だけでなく、任意の点検や修理、部品交換の費用も経費計上の対象となります。修理が必要となった際の費用や、その際に購入した部品の費用も記録を残して計上しましょう。
また、太陽光発電システムの定期メンテナンスや専用の保険料、通信費などの小さな金額でも経費に含められます。住宅用太陽光発電設備の場合、年間の平均維持費は3000円/kWとされており、5kWのシステムでは年間約1.5万円の維持費が必要です。これらの経費も適切に管理し、節税効果を最大限に活用することが重要です。
減価償却費
太陽光発電システムの導入において減価償却は重要な経理処理です。減価償却とは、太陽光発電のような固定資産の価値が時間と共に減少することを前提に、購入費用を法定耐用年数に応じて分割し、毎年一定額を経費として計上する手法です。太陽光発電設備であれば、この耐用年数は17年と定められており、17年間にわたり均等に償却することが可能です。
計算方法には「定額法」と「定率法」の二つの方式があり、定額法では毎年同じ償却額を計上する利点がありますが、初年度の償却額は定率法に比べて少なくなります。一方、定率法では初年度に高い償却を行い、次第に償却額が減少していきます。これにより、税金の繰り延べ効果で節税を図ることができますが、初年度の利益が少なくなるというデメリットも存在します。
例えば、太陽光発電システムの取得価額が300万円だった場合、定率法を用いた初年度の償却費は約35.4万円となり、翌年以降は前年度までの累積償却費を差し引いた残額に基づいて計算されます。産業用太陽光発電設備で売電収入を得る場合、減価償却を利用することで経済的な利益を期待できますが、個人が売電収入とその他の所得の合計が20万円以下の場合、減価償却を活用するメリットは少ないかもしれません。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日を基準に建物や設備などの償却資産に課される地方税で、太陽光発電設備も出力規模に関わらず課税対象となります。税額は「評定額×標準税率1.4%」で計算され、具体的な償却額も考慮されます。個人事業主や法人が利用する住宅用太陽光発電設備は、10kW以下であれば原則非課税ですが、屋根と一体型の設備は家屋として評価され、固定資産税が高くなる可能性があります。
一方、太陽光発電設備にかかった固定資産税やその設置のために購入した土地の固定資産税は、その年の経費として計上することが可能です。したがって、太陽光発電事業を行う際は、固定資産税の課税対象となるか確認し、適切に経費計上することが重要です。
ローン利息
太陽光発電システムの設置は高額なため、多くの場合、ローンを利用します。ローンを利用して太陽光発電システムを導入する際、支払った利息は経費として計上できます。確定申告時には、この利息を経費として申告することが可能です。ローンの形態が固定金利か変動金利かによって、支払う利息の額は変動します。一般的に、借入金額が大きいほど、支払初期の利息も高額になる傾向があります。例えば、200万円を固定金利2%で15年間返済する場合、最初の年の利息は約4万円になります。
その他
太陽光発電の必要経費には、設備を設置する土地の賃貸料、損害保険料、遠隔監視システムの管理費、パワーコンディショナーの運転にかかる電力費用などがあります。さらに、設備の設置やメンテナンスのための移動交通費、太陽光発電に関する知識を深めるための書籍購入費も経費に含められる可能性があります。加えて、事務用品費、通信費、広告宣伝費なども必要経費として計上できる場合があります。これらの経費を適切に申告することで、税負担を軽減することが可能です。ただし、経費として認められるためには、太陽光発電事業に関連して、必要かつ適切な支出であったと証明できる必要があります。
【注意事項】補助金を受けた場合
太陽光発電設備を設置する際、自治体からの補助金を活用することができます。この補助金は設置費用に直接充てられ、実際の自己負担額を減らすことが可能です。具体的には、補助金の額だけ設置費から差し引かれ、残る費用が実質的な経費として計上されます。そのため、補助金で設置費用が完全にカバーされた場合には、経費計上は認められません。このように補助金を利用する際には、その影響を理解して、適切に経理処理する必要があります。補助制度の詳細は自治体によって異なります。申請前、確定申告前には、公式サイトで詳細を確認して慎重に進めましょう。
太陽光発電にかかる税金
太陽光発電にかかる主要な税金は、所得税と固定資産税の2つです。売電収入に対する所得税だけが注目されがちですが、太陽光パネルなどの設備にかかる固定資産税にも注意してください。それぞれ詳しく解説します。
所得税
所得税は1年間の収入に基づいて計算され、基礎控除やその他の控除を適用した後の金額に税率を乗じて求められます。太陽光発電からの収入も、給与収入と同様に所得税の課税対象となるため、それに対する所得税を計算し、確定申告を行う必要があります。
固定資産税
固定資産税は、設備、土地、家屋に課される税金で、課税標準額に1.4%の税率を適用して算出されます。太陽光発電設備を家の屋根や土地に設置した場合、償却資産とみなされ、固定資産税の対象となることがあります。産業用で発電量が10kW以上の場合は固定資産税が課税されますが、10kW未満の場合は、法人または個人事業主が使用している場合に限り課税されます。一方、10kW未満の住宅用で個人が使用する場合、償却資産に該当しないため、固定資産税は課されません。
ただし、住宅の屋根にソーラーパネルを設置する際、取り外しができない一体型の場合には、住宅の一部と見なされます。結果として、発電容量に関わらず固定資産税の対象となります。つまり、太陽光発電設備の固定資産税は、設置場所、発電容量、使用目的、使用者によって課税の有無が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
まとめ
太陽光発電を住宅用に設置した場合、通常は確定申告の必要はありませんが、売電収入がある特定の状況下では申告が必要となることがあります。正しく判断して適切に処理するためには、取引の種類や必要な書類、手続きの詳細を理解することが重要です。確定申告に不慣れな方は収入と所得を混同しやすく、経費を計上せずに申告してしまうなどのミスを犯してしまうことがあります。
このようなミスにより、本来支払う必要のない税金を支払ってしまうことや、逆に払うべき税金が未払となってしまうこともあるため、細心の注意が必要です。税務処理に関して専門的な判断が必要な場合には、税理士や管轄の税務署に相談しながら丁寧に進めましょう。
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