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FIT制度とFIP制度の違いとは?向いている制度の選び方から、お得な制度までわかりやすく解説

2026.04.01
お役立ち情報

FIT制度(固定価格買取制度)は、発電した電力をあらかじめ決められた価格で買い取る仕組みです。 一方、FIP制度(Feed-in Premium)は、市場価格の変動に応じて買取価格が変化します。それぞれの制度の特徴を整理し、導入時に選択する際のポイントについてわかりやすく説明します。

目次

FIT制度とは?

日本では2009年に余剰電力買取制度がスタートし、その後2012年からFIT制度(固定価格買取制度)が導入されました。FIT制度は、再生可能エネルギーの電力を一定期間、決められた価格で買い取る制度です。発電事業者が太陽光や風力などで発電した電力を、小売電気事業者(電力会社など)が国の定めた価格で、法律に基づき買い取ることが義務付けられています。

買い取り期間は発電規模などによって異なり、例えば10kW未満の住宅用は10年、10kW以上の事業用は20年に設定されています。価格は市場や発電コストの状況を踏まえて、毎年見直されます。また、価格だけではなく制度内容や条件も随時見直しが行われています。例えば、2020年度以降に新規で認定を受ける10kW以上50kW未満の太陽光発電設備では、全量売電が不可となり、地域活用要件を満たすことが必要となりました。

制度の目的は、日本のエネルギー自給率向上や再生可能エネルギーの普及促進です。売電価格が一定に保たれるため発電事業者のリスクが減り、新規参入や導入が進みました。一方で、買取価格の一部は「再生可能エネルギー賦課金(再エネ賦課金)」として電気利用者が負担しています。そのため、消費者にとって電気料金の値上げが課題となっています。

FIP制度とは?

FIP制度は、「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略で、再生可能エネルギー発電事業者を支援する制度です。発電した電気を卸電力市場などで市場価格で販売し、その売電収入に加えて、国からプレミアム(補助金)を受け取ります。売電価格は市場価格に連動するため、収益は市場の動きによって変動します。一方で、国からプレミアムが支給されることで、一定の収入が確保できる仕組みになっています。

プレミアム単価は、「基準価格(FIP価格)」から「参照価格(市場での期待収入)」を差し引いた金額が設定されます。基準価格は国が電源区分ごとに定めて公表しています。参照価格は、卸電力市場や非化石価値取引市場での取引価格、バランシングコストなどを考慮して毎月計算されるため、月ごとに変動します。これにより、プレミアム単価も毎月調整されます。

発電事業者は、その月に発電した電力量(kWh)に応じて、追加的な収入としてプレミアムを受け取ることができます。従来は高圧以上の発電所が主な対象でしたが、制度改正により一定の条件を満たす10kW以上50kW未満の低圧太陽光発電所でもFIP制度を利用できるようになっています。

FIT制度とFIP制度の違い

FIT制度では、発電した電気が一定の価格で決まった期間買い取られるため、安定した収入を得やすいという特徴があります。一方、FIP制度では、電力市場の価格に応じて収益が変動します。運用の工夫によって利益を拡大できる可能性があるものの、収益が不安定になるリスクも高まります。両制度の主な違いは、収益の安定性やリスクの大きさ、そして事業者が負担する費用にあります。

制度が生まれた背景と国の狙い

2012年に導入されたFIT制度は、再生可能エネルギーの普及を短期間で進めることが目的でした。当時は再生可能エネルギーの導入が十分に進んでおらず、事業者が参入しやすい環境づくりが求められていました。このため、国は再生可能エネルギーによる電力を一定期間、固定価格で買い取ることを保証しました。これにより、事業者の投資リスクが大きく軽減され、新規参入が一気に進みました。結果として、再生可能エネルギーの導入が短期間で大幅に増加しました。

一方で、導入量の急増は再エネ賦課金の増大につながり、国民の負担が重くなるという社会的な課題も生まれました。また、FIT制度のもとでは発電事業者が市場価格を気にせず発電できるため、電力需給の調整が難しくなるといった新たな問題も明らかになりました。

こうした課題を受けて、再生可能エネルギーによる発電を電力市場に統合し、競争力を高める新しい仕組みとしてFIP制度が誕生しました。FIP制度では、市場価格に連動した売電を基本とし、そこに一定額のプレミアムが上乗せされます。発電事業者は市場の需給や価格を意識しながら、より柔軟な電力供給が求められるようになっています。

国は、FIP制度によって再生可能エネルギーを補助金に頼る段階から脱却させ、電力市場の中で自立した主要な電源として安定して利用できるよう育成することを目指しています。再エネの長期的な普及と健全な電力市場の実現を両立させるため、制度の転換が進められています。

買取価格の仕組み

FIT制度では、市場価格に左右されず、あらかじめ決められた固定価格で電気を売ることができます。契約期間中はこの価格が変わらないため、売電収入が安定し、将来の見通しも立てやすいのが特長です。

一方、FIP制度では、売電収入は電力市場の価格によって変動し、市場価格に毎月決まった額のプレミアムが上乗せされる仕組みです。ただし、市場価格は時間帯や需給で大きく変動するため、売電収入も常に変動します。価格が高い時期には収益が増える可能性がありますが、逆に低い時期には収入が減るリスクがあります。

対象となる発電設備

発電設備の対象区分は、電源の種類や出力規模によって決まっています。例えば、太陽光発電の場合、10kW未満の住宅用太陽光発電は、引き続きFIT制度が適用され、固定価格での買取が保証されます。10kW以上50kW未満の事業用の地上設置型設備においては、自家消費を行うなどの地域活用要件を満たす場合に限りFIT制度の対象となります。

50kW以上の事業用の地上設置型太陽光発電では、現在(2024年度以降)は一律でFIP制度のみが適用され、FIT制度を選択することはできません。なお、10kW以上50kW未満の事業用の地上設置型太陽光発電でも、一定の条件を満たせばFIP制度を選択できる場合があります。

また、沖縄や離島など特定の供給エリアでは、全国的にはFIP制度の対象となる設備であっても、例外的にFIT制度を利用できる場合があります。供給エリアによっても取り扱いが異なるため、注意が必要です。

FIT制度およびFIP制度の対象区分や適用要件、調達価格・基準価格は毎年見直されています。発電設備ごとに認められる制度や適用条件は多岐にわたるため、制度選択や設備導入の前に、最新の情報をもとに十分な事前調査が必要です。必ず資源エネルギー庁の公式ページ「なっとく!再生可能エネルギー」で最新情報を確認してください。

計画値同時同量制度への対応

計画値同時同量制度は、発電事業者が事前に立てた発電計画と、実際の発電量が一致するよう管理する仕組みです。「バランシング」とも呼ばれ、発電と需要のバランスを保ち、安定した電力供給を支えるために重要です。

FIP制度が導入されたことで、再生可能エネルギーの発電事業者も、火力や水力など他の発電事業者と同様に計画値同時同量制度への対応が義務付けられました。これにより、発電計画の作成から、実際の発電量との差分(インバランス)の調整や管理まで、事業者自身が責任を持つ必要があります。計画通りに発電できなかった場合、その差分に応じたコスト(ペナルティ)は、発電事業者が負担します。

一方、従来のFIT制度の下では、再生可能エネルギー事業者はインバランスによるペナルティが免除されていました。これは、太陽光や風力発電のように発電量が天候に左右されるため予測が難しいので、特例としてリスク負担が軽減されていたためです。FIP制度の導入後は、再生可能エネルギーも他方式と同等の扱いとなり、発電計画と実績を自ら管理することが原則となりました。

この制度変更により再生可能エネルギー事業者の運用コストや管理負担は増加しましたが、市場価格と連動した売電が可能となるため、工夫次第では収益向上も期待できます。また、発電量の予測精度や管理技術を高めることが、新たなビジネスモデルの拡大につながります。

インバランスリスクへの対応策として、FIP制度の導入初期には、太陽光・風力発電事業者向けにバランシングコストを補う補助金が設けられています。具体的には、2022年度運転開始分は1kWhあたり1.0円の補助が支給され、2023年度は0.95円/kWh、2024年度は0.90円/kWhと、毎年0.05円ずつ減額されます。2025年度以降は0.1円ずつ段階的に補助金が縮小されていく予定です。今後は補助金が徐々に減っていく中で、より高い発電計画の精度やインバランスリスクへの柔軟な対応力がますます重要になっていくでしょう。

非化石価値の扱い

FIT制度では、非化石価値が売電価格に組み込まれているため、発電者が非化石価値証書を市場で個別に取引することはできません。一方、FIP制度では、非化石価値が証書として市場で売買できます。そのため、発電者は非化石価値証書を販売して追加の収入を得ることができ、収益の管理も柔軟に行えるようになります。非化石価値の取扱いや収益面での機会が広がる点が、両制度の大きな違いといえます。

FIT制度のメリット・デメリット

FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電力を国が一定期間、固定価格で買い取る仕組みです。この仕組みによって発電事業者は収益の安定が見込めることから、金融機関からの資金調達がしやすくなります。また、電力の価格変動リスクがないため、発電事業者は長期にわたる資金回収計画を立てやすく、発電事業の参入障壁を下げる効果もあります。加えて、FIT制度が普及したことでエネルギー自給率の向上や環境負荷の低減に大きく寄与した点も大きなメリットといえます。

一方で、制度の導入当初は発電事業者を積極的に誘致するため買取価格が高めに設定されていたため、そのコストが再エネ賦課金として消費者の電気料金に上乗せされ、国民負担が増大したというデメリットが存在します。さらに、買取期間終了後は「卒FIT問題」に直面し、売電価格が大幅に下がるケースが多く、持続的な収益確保が難しくなる企業も見受けられます。一定の価格保証があることで発電コスト削減への取り組みがやや弱まりやすいという傾向も無視できません。このため、導入時の収益性だけでなく、長期的な市場環境の変化や制度終了後の対応方法まで、十分な検討が求められます。より詳しく解説していきます。

FIT制度のメリット

固定価格で売電を継続できる

売電価格が一定期間固定されることで、太陽光発電の場合は設備容量が10kW以上なら20年間、10kW未満なら10年間と、売電期間と価格が制度で明確に決まっています。この仕組みにより、市場価格の変動を気にせずに安定した収入を得られるため、発電事業者は長期運用のリスクを大幅に軽減できます。また、最初から売電価格と期間が決まっているため、資金計画や事業計画が立てやすくなります。そのため、投資判断がしやすくなり、新規参入を考える事業者にも魅力といえます。

環境負荷低減への貢献

再生可能エネルギーは、発電時に二酸化炭素を排出しないという特徴があります。そのため、地球環境への負荷を大幅に減らすことが期待されています。FIT制度により再生可能エネルギーの導入が進み、環境に配慮した電力の普及が加速しています。また、発電した電力を売却できる仕組みによって、持続可能な社会の実現にも貢献しています。

エネルギー自給率向上への寄与

再生可能エネルギーの導入が増えることで、日本のエネルギー自給率は向上します。特に、FIT制度は海外からの化石燃料への依存を減らす役割を果たします。家庭や事業所では、自ら発電した電気を自家消費できる点も特徴です。この仕組みにより、自給体制が整い、電力の安定供給や持続可能性が高まります。さらに、余剰電力は売電することができ、経済的なメリットも期待できます。

FIT制度のデメリット

卒FIT後の売電価格低下

卒FITとは、FIT制度で定められた固定買取期間が終了した後に、売電価格がそれまでの固定単価から各電力会社や市場が決める単価へと移行する状態を指します。FIT制度の期間中、例えば2013年には1kWhあたり38円といった高単価での売電が実現していましたが、固定期間終了後は一般的に1kWhあたり7~9円台まで大幅に下がります(2026年1月時点の大手電力会社の買取価格目安)。

この価格低下の主な理由は、再エネ賦課金による価格保証が終了し、各事業者が独自に買取価格を設定するようになるためです。その結果、売電による収入は安定しなくなり、事業者は収益悪化や経営計画の見直しを迫られます。対策としては、従来の地域の電力会社以外の新たな買取事業者へ切り替えることや、収益確保のために新たなビジネス戦略を検討する必要があります。このように、卒FITは安定収入の時代の終わりを意味するとともに、事業者が状況に柔軟に適応しながら収益を維持する重要性を示しています。

発電コストの高さ

発電コストの高さは依然として大きな課題です。再生可能エネルギーの普及が進めば、火力や原子力発電と同程度のコストに近づくと期待されていましたが、現時点ではコスト低減のペースが想定よりも遅れています。特に日本では、海外と比べて発電コストの低下が十分に進んでいません。そのため、市場で十分に競争できる水準や、独立した運用が難しい状況です。

こうした背景から行政支援が引き続き必要となり、発電コストの高さは再エネ賦課金という形で消費者の家計に直接影響を与えています。この結果、国民の経済的負担が増加し、制度の持続性や今後の安定運用について懸念が広がっています。今後はさらなる発電コストの削減や、高コスト構造の見直しが不可欠です。進展がなければ、FIT制度の継続や再生可能エネルギーの普及拡大には限界が生じると考えられます。

再エネ賦課金の負担

FIT制度の大きな特徴の一つに、再エネ賦課金の存在があります。再エネ賦課金は、FIT制度が導入されて以降、電気料金に上乗せされる形ですべての消費者が負担しており、その金額は再エネ設備の普及拡大に伴い上昇傾向にあります。

具体的には、賦課単価は2015年度には1.58円/kWhでしたが、2022年度には3.45円/kWhまで増加しました。また、2023年度にはウクライナ情勢などによる電力市場価格の高騰(いわゆる回避可能費用の増加)を受け、一時的に1.40円/kWhまで低下しましたが、市場価格が落ち着いた2024年度には3.49円/kWh、2025年度には3.98円/kWhへと再び上昇しています。

これは過去最高水準となっており、FIT制度による国民の負担は増加の一途をたどっています。したがって、電気料金の抑制や消費者負担の軽減に向けた具体的な対策を講じることが、今後ますます重要な課題となっています。

このような社会全体の負担増という背景もあり、発電事業者には、制度に頼らない効率的な運用や、固定買取期間の終了後を見据えた持続可能な事業設計が求められています。特に、買取期間の節目を迎えるタイミングは、事業の収益性を維持し、次なるステップへ進むための大きな転換点です。

「FIT10年目以降、どう備える?収支改善と出口戦略を考える」では、FIT終了後の「売電を継続する」「設備を撤去・売却する」「事業を継承する」といった選択肢ごとに、判断基準や準備すべきポイントを整理しています。今後の収益維持や具体的な選択肢の検討に、ぜひダウンロードしてご一読ください。

FIP制度のメリット・デメリット

FIP制度の最大のメリットは、市場価格の変動を活かして収益拡大が期待できる点です。これは、固定価格で売電する従来のFIT制度とは異なり、電力市場の動向や需要に応じて売電戦略を柔軟に選択できるためです。実際、小売電気事業者との相対契約や、アグリゲーターなど多様な販売先との取引が可能であり、タイミングや条件によっては高値での売電も見込めます。こうした自由度の高さは、新たなビジネスモデルやサービスの創出を促進する環境づくりにつながります。

一方でデメリットとしては、市場価格の変動リスクが避けられず、価格が下落した場合には売電収入が大きく減少する可能性があります。また、複数の販売先と取引したり、市場動向を分析したりする際には、運用コストや専門知識が求められ、結果として事務作業や管理負担も増加します。

このような市場分析や運用準備が十分でない場合、安定した収益を確保することが難しくなり、運用面のリスクが高まる点にも注意が必要です。つまり、FIP制度は柔軟な運用が可能である一方、収益や運用に関するリスクも伴う制度と言えます。より詳しく解説していきます。

FIP制度のメリット

収益拡大の可能性

電力市場の価格が高騰した場合、発電した電気をその市場価格で販売できます。市場の動向を正しく把握することで、従来のFIT制度よりも高い収益を得られる可能性が高まります。さらに、市場価格の変動に合わせて発電量や売電方法を柔軟に調整し、戦略的に運用すれば、収益性のさらなる向上が期待できます。例えば、蓄電池を活用して発電した電力を市場価格が高いタイミングで売電したり、市場分析に基づいて発電計画を調整したりすることで、効率的に収益を拡大できます。

また、FIP制度の導入初期には基準価格がFIT制度と同程度に設定されています。そのため、制度移行によって収益が大きく下がるリスクが抑えられ、従来と同等の収益も確保しやすくなっています。これらの特長により、電力事業者の事業運営上の選択肢が広がり、より高い収益を目指しやすくなります。

電力需給バランスへの貢献

発電事業者は、市場価格を参考にして売電のタイミングを柔軟に調整できます。そのため、電力の需給バランスを維持しやすくなります。また、この仕組みにより需給調整にかかるコストを抑えられることが期待されます。需給バランスが安定すると、停電のリスクや再生可能エネルギーの余剰電力の発生も抑えやすくなります。これらの効果によって電力供給の効率化が進み、最終的には国民が負担する電気料金の軽減にもつながります。

多様なビジネスモデルの創出

発電事業者は、小売電気事業者やアグリゲーターなど、さまざまな販売先と柔軟に契約できるようになります。その結果、需要が高まる時間帯を狙って売電する戦略を立てやすくなり、収益の向上が期待できます。

さらに、蓄電池を活用して電力を貯蔵したり、需給調整サービスを提供したりすることにも取り組みやすくなります。これらの取り組みにより、多様なビジネスモデルや新しいサービスが生まれ、再生可能エネルギー分野におけるビジネスの幅がさらに広がるのが大きな特長です。

FIP制度のデメリット

収益予測の難しさ

売電価格が市場価格によって変動するため、収益の見通しを立てることが難しくなります。特に、電力の需要が落ち込んだり供給が過剰になったりすると、市場価格は下がりやすく、その結果、収入も不安定になりやすい傾向があります。

一定の価格で売電できる保証がないため、FIT制度と比べて収入の安定性が低くなる点がデメリットの一つです。収益を少しでも安定させるためには、市場の動向を十分に把握し、運用方法に工夫を取り入れることが重要です。

運用コストの発生

発電量の計画と実績に差が生じた場合、その調整にかかるコストは発電事業者自身が負担します。これは従来のFIT制度にはなかった追加の運用コストです。市場で競争に参加するためには、継続的なコスト管理や体制の整備が欠かせません。さらに、大容量の蓄電池を導入する場合には、初期投資を回収することが大きな課題となり、事業継続の計画についても慎重な検討が必要です。このように、運用コストの増加は無視できないデメリットといえるでしょう。

認定プロセスの複雑さ

認定申請の手続きは複雑で、準備には多くの時間がかかります。設備基準を満たす必要があり、提出しなければならない書類も多くあります。また、申請には専門的な知識が求められるうえ、新たな費用も発生します。これらの条件が参入のハードルを高くしています。特に未経験の方にとっては、作業の負担が大きいことが大きな課題となります。

FIT制度とFIP制度はどちらがお得か?

発電設備の規模や事業方針によって、最適な制度の選び方は変わります。小規模な発電所で安定した収益を重視し、初期投資を着実に回収したい場合は、FIT制度が適しています。FIT制度では、国が一定期間、固定価格で電力を買い取るため、市場価格の変動に左右されません。そのため、長期的な収益予測が立てやすく、計画的な事業運営が可能です。一方で、FIT期間が終了すると売電価格が大きく下がるため、いわゆる「卒FIT」を見据えて、自家消費や新たな販売方法など、次の戦略も早めに検討しておく必要があります。

大規模な発電設備を持ち、市場動向に合わせて柔軟な運用ができる場合は、FIP制度が適しています。FIP制度は、市場取引価格に一定のプレミアムを上乗せする仕組みです。市場価格が上昇した場合は高値で売電できる可能性があり、収益拡大が期待できます。また、蓄電池を活用して発電量や売電のタイミングを調整すれば、高値の時間帯に売電しやすくなります。これにより、エネルギー自給率の向上やさらなる収益増加も見込めます。ただし、発電量の予測や調整など運用管理が求められ、予測が外れた場合にはペナルティが発生することもあります。このため、高度な運用管理体制が必要です。

安定した収益を重視するか、収益拡大を目指すか、自社の発電設備の規模や運用体制を十分に把握した上で、最適な制度を選び、戦略を立てることがメリットを最大限に引き出すポイントです。

FIT制度とFIP制度に向いている個人・事業者は?

収益の安定性や予測のしやすさを重視する場合は、FIT制度が向いています。発電した電力を決められた価格で長期間売ることができるため、初めて太陽光発電を導入する個人や小規模事業者にとって安心感があります。特に、住宅用の太陽光発電を投資目的で検討している方や、本業とは別に安定した副収入を得たい方にとっては、初期投資の回収がしやすく、市場価格の変動リスクも避けられます。

一方で、FIP制度は市場価格と連動する仕組みのため、売電収入が電力市場の価格変動によって左右されます。そのため、価格変動リスクを受け入れられる企業や、電力の需給調整、市場動向の分析、運用を自社で管理できる体制がある事業者に適しています。さらに、2024年度以降は50kW以上の地上設置型の太陽光発電設備について、原則としてFIP制度の適用が必須となっている点にも注意が必要です。

FIP制度は、再生可能エネルギーの環境価値を活かして新たなビジネスモデルを展開したい企業に向いています。また、アグリゲーターなどの専門事業者と連携し、リスク管理や収益の最大化を目指すケースでも選ばれています。

制度の選択にあたっては、発電規模や資本力、リスク許容度、事業方針など、自社や自身の状況に応じて慎重に検討することが重要です。

FIP制度で損失を抑えるためのポイント

FIP制度で損失を抑えるためには、市場価格の変動を正しく把握し、売電のタイミングを的確に見極めることが大切です。特に、電力市場価格が高騰する時間帯に積極的に送電・売電することで、収益の最大化が図れます。また、発電した電力を一時的に蓄電池へ蓄え、電力市場価格が高いときに放電する運用を取り入れると、損失を効果的に抑制することが可能です。

蓄電池の導入には初期コストがかかりますが、近年は設備価格が下がっています。また、国や自治体の補助金制度の活用も検討できます。また、こうした運用の工夫に留まらず、設備の設計段階から収益性を高めるアプローチも有効です。例えば、発電設備の方位を南西向きに設計することで、高値で売電できるタイミングを増やすことができます。以上のように、売電戦略や設備投資に創意工夫を加えることで、安定的な運用と収益拡大の両立が実現しやすくなります。

アグリゲーターの活用

インバランス料金は、発電計画と実績のズレによって発生し、FIP制度運用における大きなリスクとなります。このリスクを抑える有効な手段として、「アグリゲーター」と呼ばれる特定卸供給事業者への委託が考えられます。

アグリゲーターは、複数の再生可能エネルギー発電所をまとめて一括管理します。最新の予測技術を活用し、発電量を高い精度で見積もることができます。また、市場取引や計画値同時同量に関わる需給調整など、専門性の高い業務も代行します。これにより、発電事業者が自社で対応する必要がある運用管理やリスク対応の負担を大幅に軽減できるのが特長です。

インバランスによる損失を減らし、売電収益の安定化も期待できます。特に、自社のみでの運用が難しい場合は、信頼性や実績のあるアグリゲーターを選ぶことが安定的な収益を確保するうえで重要です。

まとめ

FIT制度は、国が決めた固定価格で電力を一定期間買い取ることで、発電事業者に安定した収入をもたらしてきました。これにより、再生可能エネルギーの導入拡大が進みました。一方で、再エネ賦課金による電気料金の上昇や、市場価格を反映しない発電の増加に伴う電力需給バランスの調整が難しくなるなど、いくつかの課題も明らかになっています。

こうした状況から、2022年4月にFIP制度が導入されました。FIP制度では、市場での売電収入に一定のプレミアムが加算される仕組みとなっており、発電事業者は市場の動向を考慮した運用が求められます。この結果、再生可能エネルギー業界の自立や電力市場との統合が一層進んでいます。設備規模の観点では、FITは主に50kW未満、FIPは50kW以上の設備が基本対象です。ただし、10~50kW未満の太陽光発電については、条件によってはどちらの制度も選択できる場合があります。2026年度には、給電優先ルールの見直しが予定されており、10~50kW未満においても条件に適合する場合はFIT終了前にFIPに転換することが優位になることもあります。

収益面では、FIT制度は収入の安定性を重視する発電事業者に向いています。一方、FIP制度は市場価格によって収益拡大の可能性があるものの、価格変動リスクや運用負担が増える点に注意が必要です。また、FIP制度では発電した電気の非化石価値(環境価値)を証書として取引でき、新たな収益源となる場合があることも特徴です。

どちらの制度が自社に合っているかは、設備規模や資本力、リスク許容度、運用体制、活用できるリソースなど、さまざまな観点から総合的に判断することが重要です。状況に応じて、最適な制度を慎重に選択しましょう。

FIT制度による売電を行ってきた場合、買取期間の終了後には売電価格の低下や設備の更新、事業承継など、将来を見据えた収支計画の見直しを行うことが不可欠です。オムロン ソーシアルソリューションズでは、FIT終了後の対応についてまとめた資料を公開しています。「売電を継続する」「設備を撤去・売却する」「事業を継承する」といった選択肢ごとに、判断基準や準備すべきポイントを整理しています。今後の収益維持や具体的な選択肢の検討に、ぜひダウンロードしてご一読ください。