産業用自家消費システム

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開発者が解説する産業用低圧単相蓄電システムKPBP-B

2024.04.24
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産業用蓄電システムの商品コンセプト

はじめに、商品コンセプトについてです。
「コンセプト:最適コンポの組み合わせで、産業向け案件における”自家消費・BCP価値を最大化”」としておりまして、 既存のオムロンの完全自家消費用パワーコンディショナKPW-A2を中心とした自家消費用機器と組み合わせて使用する産業用蓄電システムとなります。
PV-PCSや保護継電器、デマンドコントローラとの組み合わせを通じ、 産業市場で必要とされる自家消費最大化つまり電気代の削減と、レジリエンス強化を果たしつつ、機器の一括提供でシステム構成を簡素化します。
住宅用蓄電システムで培った技術を活用することで、コスト競争力も維持した商品となります。
言葉が難しくなっていますが、後ほど商品の特長を解説いたします。

蓄電システムの機器構成

蓄電システムKPBP-Bの構成機器としては図の通り、産業用蓄電パワーコンディショナ、16.4kWh・もしくは9.8kWhの蓄電ユニット、PVユニット、トランスユニット、200V分電盤となります。
画面左の既存、完全自家消費専用パワーコンディショナ「KPW-A2」と連動し、高速高精度の負荷追従制御を蓄電システム側にも適用することで、 蓄電システム側も負荷追従を行い、システム停止のリスクを抑えつつ、システム全体で効率よく電力を活用しつつ、レジリエンスも強化致します。
私先ほどからKPW-A-2と連動、と何回か言っていますが、大切なことなので重ねて説明します。 KPW-A-2という完全自家消費向けパワコンは、コントローラー機能が内蔵されたマスター機と、そのマスター機から指示を受け取ることができるスレーブ機がございます。KPW-A-2のマスター機は、とても優秀で、需給バランスを常にチェックし、スレーブ機へ適切な指示を与えています。これにより、高速高精度の負荷追従が出来る、ということです。
産業蓄電システムKPBP-Bは、このマスター機から指示を受け取ることができるシステム、ということです。
この図に「負荷追従制御機能の対象にKPBP-Bを追加」と記載してあります。マスター機の傘下へ入ることができる蓄電システムだ、ということです。

特長①再エネ率最大化ー高速高精度負荷追従

大きな特徴は全部で5つあります。
1つ目はシステム全体での負荷追従制御です。
高速かつ、99%程度の高精度負荷追従制御により、発電電力を最大化し、余った電気を蓄電池に貯めたり、三相電力負荷に供給したりすることで、有効活用できます。
なぜシステム全体での負荷追従が可能か、というと、コントローラーとRPR機能が内蔵されたKPW-A-2と蓄電システムとが高速通信できるからです。
一般的なシステムの場合、負荷追従のために別途コントローラが必要かつ追従精度が悪くRPRが作動する可能性が高いです。
RPRが作動すると、システムが停止し、普及に膨大な費用・時間を要します。
弊社システムの場合、高速高精度負荷追従制御を実施しRPR検出を回避し、 システム停止のリスクを回避できます。
加えて、高精度の追従制御で、ロスなく、自家消費を実施出来ます。更には蓄電システムに関してはDC接続のHYB構成なので、一層の高効率性と自家消費率向上が期待できます。
最近、RPRやコントローラー、その他電子機器の入手が困難な状況にあります。納期に時間がかかる、そのような状況だから価格が一時的に高くなってしまっているなど、 せっかくお客様から自家消費の相談を頂いたのに、なかなか工事を始められない。EPC事業者様にとっては仕事が出来ない、そんな状況下で、この「コントローラーとRPR機能内蔵」という特長を高評価頂いております。

特長②再エネ率最大化ーPV余剰最適充電

2つ目は太陽光発電の余剰電力の最適充電です。
一般的なシステムの場合、太陽光発電システムと蓄電システムの連携が複雑で余剰電力を無駄にしてしまいます。
今回の弊社のシステムの場合、自家消費パワコンと蓄電システムとの情報通信を通じ、 太陽光で発電した電力を設備内で自家消費した後に余剰電力があり且つ蓄電池に充電できる余裕があれば、 余った電力のみを蓄電池に充電可能です。日が落ちた夕方や夜に蓄電池から放電することで、自家消費率を向上させることが可能です。
需要家様にとって再エネ率最大化とそれに伴う電気代削減が可能となります。

特長③再エネ率最大化ー三相動力負荷消費

3点目は三相側への回り込みです。
一般的なシステムの場合、単相・三相で自家消費を実施する場合、其々単相・三相の自家消費パワコンや蓄電システムが必要です。
弊社の場合、専用保護継電器(KP-PRRV-CPC)との接続を通じ、キュービクルの1次側で高圧主幹計測を行うことで、 太陽光の発電電力・蓄電池に貯めた電力を単相側で自家消費した後に三相側にも供給可能となり、より自家消費を行うことが可能です。

特長④再エネ率最大化ーデマンド制御

4点目がデマンド制御=ピークカットです。
オプションのデマンドコントローラを導入頂くことで、 契約電力の最大デマンドを更新しそうと予測した際に蓄電システムに対し放電指示を行い、ピークカットを行います。
結果として、契約電力の更新を回避することができ、翌月以降の電気代の高騰を回避できます。
電気代高騰が続く今、電気代削減という目的で自家消費システムを導入される需要家様にとって評価頂く特長のひとつです。

特長➄BCP対策

最後、5つ目の特長として、弊社のシステムの場合、非常時の事業継続=BCP対策も可能であることです。
蓄電システムから最大200V/4KVAの電力を設備内負荷に対して供給可能です。
また、非常時も蓄電システム内のPVユニットで発電した電力を蓄電システムに充電可能なため、 蓄電池が使い切りにならず、長期停電にも対応出来ます。
よりレジリエンス強化を図りたいというお客様には、蓄電システムを最大8台まで併設頂くことが可能となります。
病院や介護施設、また地域の避難所となることを想定された企業様のオフィス等にも設置頂いております。自社のレジリエンス強化だけでなく、地域貢献、CSRの一環として需要家様にご採用頂く案件も増えてきました。

ここまで、蓄電システムの商品コンセプトと特長を説明させて頂きました。
蓄電システムの特長をご理解いただけたでしょうか?
蓄電システムを用いたシステムの構成や、動作の詳細については後半に解説致します。
私からは最後に、「よくある質問」を紹介させていただきます。

システムについてですが、
①蓄電池のみ後付けが可能なのでしょうか?蓄電池単体で動くのでしょうか?
特長にあった通り、完全自家消費システムとして使用する場合は、KPW-A-2と連携させる必要があります。
そのため、蓄電池単体での設置はできません。KPW-A-2と一緒なら問題ありません。

次はゲートウェイボックスについてです。
②消費・発電量を一緒に合わせて見れますか?
③ゲートウェイボックスに蓄電システムのGWを繫げれますか? 
よくご質問を頂くのですが、これらについては見ることが出来ません。

④高圧受電の場合、機器毎に個別のCTが必要ですか?

高圧受電の場合、専用保護継電器と接続し、キュービクルの1次側で高圧主幹計測頂くことで、機器毎の個別CTは不要です。
一般的なシステムの場合、機器毎に個別にCTが必要になります。そのため、オムロンのシステムの場合、省配線でシステム簡素化に寄与します。

➄従来機種通りであればケーブルが短いのでは‥

低圧受電の場合は、従来機種ですと機器毎に個別にCT計測と専用の最長30mケーブルが必要となっていましたが、
KPBP-Bシステムでは、線径にもよりますが、汎用ケーブルにてケーブル長を延長することが可能です。
一般的なシステムの場合、主幹計測するCTの専用ケーブルが短く、設置制約が発生することもございますが、弊社の場合、線長が長く設置自由度が向上します。

⑥蓄電池は重量物ですが、運送は問題ありませんか?

一般的な産業用蓄電システムの場合、大型で重量も思いため、クレーンが必要になったりと機器設置コストが膨大です。
弊社の場合、住宅領域で培った技術、及び製品そのものも家庭用蓄電システムをベースにしたことで、小型軽量を実現し、機器コストに加え、
運搬・設置コストとスペースを抑制致します。

➆蓄電システムとPVシステムを連携される設定は、難しいのでは?

設定に関しましても、一般的なシステムの場合、太陽光PCS・蓄電システム等、個別に設定が必要且つ動作の連携も低いです。
弊社システムの場合、産業システム設定という推奨設定を選択すれば一括に近い形でシステム全体で最適なシステム設定がされ、設定の手間を回避できます。
こちらも後半で詳しく説明いたします。

これが最後の質問です。⑧重塩害地域への設置は可能ですか?
残念ですが、海から500メートル以内の設置を想定した重塩害対応品の用意はございません。

改めてになりますが、既存のオムロンの完全自家消費用パワーコンディショナKPW-A2を中心とした自家消費用機器と組み合わせて使用する 産業用蓄電システムが現在発売中です。
PV-PCSや保護継電器、デマンドコントローラとの組み合わせを通じ、 産業市場で必要とされる自家消費最大化つまり電気代の削減と、レジリエンス強化を果たしつつ、機器の一括提供でシステム構成を簡素化します。
及び、住宅用蓄電システムで培った技術を活用することで、コスト競争力も維持した商品となります。

どのような商品開発なのか

開発概要のイメージです。
これまで弊社が提供しいてるKPW-A-2というPVパワコンと専用保護継電器による自家消費システムに、 今回、新たにマルチ蓄電パワコンを仲間入りさせるため、住宅向けのKPBP-Aの設計資産を活用した システムの開発を行いました。

商品開発の狙い

ここでは、開発の狙い、拘りについて共有したいと思います。

これまでのFIT時代の低圧全量のように、少ない機器・簡単な施工・施工バリエーションが少ない状況から、
今後の高圧受電のシステム構築で難しい問題、例えば高圧分電盤、保護継電器、自家消費制御の設定、需要家の配線、
ネットワーク接続など難度がありそうなところの解消に、何か可能な限り貢献できないかどうかを考えてました。
なので、高圧需要家の参入を促すため、産業蓄電システムの施工コスト削減や、低圧の事業者様が高圧へと事業領域を広げられるようにしたい。
そのために、省配線、システム化、簡単な設定、自家消費制御の自動化、蓄電の連動などの簡単さに拘りました。

例えば、

1つ目は“専用保護継電器を活用した省配線を中心に簡単施工”
これは、KPW-A-2による自家消費システムにおける専用保護継電器を活用した通信による省配線化を継承していることを指します。

2つ目は、”オムロンの保護と制御の強みを寄せたシステム価値の実現”
オムロン独自のシステム実現方法により、自家消費制御コントローラは不要で、
専用保護継電器、PVパワコン、KPBP-Bの構成で自家消費制御と蓄電の連動を実現しました。

3つ目は、“多様なシステム構成パターンに対応し、複数台設定や自家消費設定の簡素化“

これは後で説明するシステム構成に関連しますが、高圧では色んなシステムに対応できるように配慮したこと、
でもそうすると、施工設定が複雑化するので、可能な範囲で、システム構成設定を簡単にできるように検討しました。

以降、それぞれのポイントについて概要を説明したいと思います。

専用保護継電器を活用した省配線を中心に簡単施工

こちらは、先ほどの拘りの一つ
“専用保護継電器を活用した省配線を中心に簡単施工”を実現するためのシステム構成のイメージの概要を示しています。

図のように、赤い箱が今回新しく開発したKPBP-Bで、そのままKPW-A-2のシステムに組み込むことができます。
以上のように、マルチ蓄電パワコンが専用保護継電器とKPW-A-2に連動して動くことができます。

オムロンの保護と制御の強みによるシステム価値の実現

こちらは、先ほどの拘りの一つ
“オムロンの保護と制御の強みを寄せ、小ない投資での実現”を示す、システムの機能価値のイメージを示します。
自家消費蓄電システムで実現する機能価値はとてもシンプルで、
①PV発電量を棄てずに貯める
②必要な時に、必要なだけ蓄電池電力を充放電させる
ことを実現します。

図では、①の例として、KPW-A-2の太陽電池が、KPBP-Bの蓄電池ユニットに充電され、有効活用しているイメージを示します。
このような制御設定は、専門的な知識は不要で、システム構成に関する設定を行うだけで、自家消費制御の自動化と蓄電の連動が行われます。
次に、多様なシステム対応と設定に関する内容について、今村さんから説明頂きます。

それでは次に蓄電システムの特長についてお話します。

システム構成(低圧完全自家消費)

本商品ですが、機器の組み合わせと各種設定によって様々な用途に応じてシステム構築が可能となっております。
本日はその代表的なシステム構成について説明させていただきます。

・まずはこちらのシステム。
スモールオフィス/診療所など低圧受電契約で自家消費システムを構築したい場合。
またもう一つが
小規模店舗など高圧受電契約なんだけどOVGR不要な場合(パワコン容量が10kW以下等)。そのときに低圧単相側で自家消費システムを構築したい場合。

このようなシステムを低圧完全自家消費と呼んでおりまして、このようなシステム構成および各パワコン設定でシステム構築が可能です。

まず、自家消費システムはマスター機とスレーブ機という機器が必要になります。
マスター機には「KPW-A55-2PJ4」を、スレーブ機には「KPW-A55-2J4」を、蓄電パワコンであれば「KPBP-B」をご用意ください。
(PVパワコンのマスタ機とスレーブ機で形式が異なっておりますのでご注意ください)

各パワコンの設定ですが、それぞれ「システム構成」という設定項目がございますので、
マスター機であれば、「sys-a(低圧完全自家消費)」、PVパワコンのスレーブ機であれば「sys-s(スレーブ)」、蓄電パワコンのKPBP-Bであれば「テイアツジカショウヒ0」を設定してください。

それと、各パワコンでユニットNo設定、マスター機のみRPRの設定をしていただければ、
低圧完全自家消費システムとしての基本的な初期設定は完了します。

システム構成(高圧完全自家消費)

・つぎはこちら
スーバー・ドラッグストア・小規模工場など高圧受電でOVGRが必要。
そして、三相の動力負荷があり、単相出力を三相側でも消費させてより自家消費率を高めたい といったシステムになります。

このようなシステムを高圧完全自家消費と呼んでおりまして、このようなシステム構成および各パワコン設定でシステム構築が可能です。

マスター機には「KPW-A55-2PJ4もしくはKPW-A55-2J4」を、スレーブ機には「KPW-A55-2J4」、蓄電パワコンであれば「KPBP-B」を、あと専用保護継電器(KP-PRRV-CPC)をご用意ください。

各パワコンの設定ですが、「システム構成」の設定でマスター機であれば、「sys-d(高圧完全自家消費(専用保護継電器))」、PVパワコンのスレーブ機であれば「sys-s(スレーブ)」、蓄電パワコンであれば「コウアツジカショウヒ0」を設定してください。

それと、各パワコンでユニットNo設定をしていただければ、高圧完全自家消費システムとしての基本的な初期設定は完了します。

システム構成(高圧完全自家消費)

・最後は
老人ホームなど高圧受電でOVGRが必要なシステム。
先ほどのシステム構成と違うところは、三相の動力負荷はあまりないので、 自家消費は低圧単相側で十分という場合になります。

機器選択・各パワコン設定は、右表のとおりとなっておりまして、 「システム構成」の設定で、 マスター機であれば、「sys-b(高圧完全自家消費(CT))」、PVパワコンのスレーブ機であれば「sys-s(スレーブ)」、蓄電パワコンであれば「テイアツジカショウヒ0」を設定してください。

それと、各パワコンでユニットNo設定、マスター機のみRPRの設定をしていただければ、高圧完全自家消費システムとしての基本的な初期設定は完了します。

システム動作(例:高圧完全自家消費)

こちらの図は専用保護継電器を使った高圧自家消費のシステム構成図になります。

右上の図が自家消費型のPVパワコン、右下の図が蓄電システムとなっており、
それぞれのパワコン出力を左下の電灯負荷で消費、さらに三相の動力負荷で消費します。

また、キュービクルの1次側に専用保護継電器を接続しOVGR保護、および電力量監視し自家消費のため各パワコンの出力をコントロールするというシステムです。

システム動作(消費>PV発電)

まずは、朝方など消費>PV発電の場合の動作になります。
オレンジ矢印がPV発電、緑矢印が主幹電力、青矢印が蓄電池の充放電を表しています。

朝方などPV発電よりも消費の方が大きい場合、システムは逆潮流しませんので、自家消費の制約がかかりません。
そのため、PVは出力を絞ることなく最適な発電をします。
その際、蓄電池の動作は、経済モード、グリーンモードといった蓄電動作モード設定に従い充放電動作をします。

通常のPVパワコンと蓄電パワコンの併設の場合と特に変わらない動作ですね。

システム動作(消費<PV発電)

次に昼間など、消費<PV発電となる場合の動作になります。

自家消費システムでは発電電力を逆潮流させることができません。
そのため緑矢印の主幹電力が逆潮流しないように(0W付近となるように)、 PV発電および蓄電池の充放電量をコントロールします。

蓄電システムがない場合は、PV発電を絞ることで自家消費を実現するわけですが、もったいないですよね。

蓄電システムがある場合は、蓄電池への充電を優先的に動作させることでPV発電を絞ることなく有効活用できます。

また、この蓄電池への充電動作は、蓄電動作モードに関わらず動作します。
例えば、経済モードの放電時間帯といった通常ですと充電しない時間帯であっても充電動作を行います。

なおこの充電動作はパワコン間の情報のやり取りだけで実現させてますので、 別途コントローラをつけて充放電制御するといったことは不要です。
特別な設定も特に必要なく、システム構成の設定で「自家消費」を選択していただければいいだけなので、 お手軽にPV余剰最適充電が実現できます。

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