大学でソフトウェア技術を学び、将来は、社会の広い分野で多くの人に使われるような機械やシステムを作る仕事に携わりたいと考えていました。オムロンの駅務事業について知ったのは、通学中のことです。駅の改札を通る際、自動改札機に付けられていたオムロンのロゴを見て驚いたのを覚えています。オムロンが日本全国で毎日のように利用される駅に欠かせない機械を作っていることを知り、「こういうものを作る仕事をしたい」と志望しました。
入社して最初に携わったのが、工業用のコントローラに用いられるソフトウェアの設計でした。当社の工業用コントローラは、さまざまなものづくりの現場や機器の制御で使われています。「幅広い分野で多くの人に使われるものを作りたい」という希望にぴったりの仕事に最初に携わることができました。製品をきわめて高い品質で生み出す新規開発の醍醐味を知ったのも、この時です。以来今日までずっと新規開発に携わってきました。
現在、OSS(オムロン)では、2030年を見据え、「未来の駅」の実現を目指し、2030年の未来の駅で価値を発揮する製品やサービスに必要な次世代システムの開発に取り組んでいます。
このプロジェクトの中で、私はシステムアーキテクトとしての役割を担っています。未来の駅で必要とされるさまざまな機能を具体化し、それを実現するためのシステムを構成する要件を一つひとつ明らかにし、それらをどこにどのように配置し、どのように運用すれば最適に稼働するか、整合性を取りながら全体の価値を最大化できるシステムを考え出すのが私の役割です。
例えば、駅係員の方々が本来の業務に集中できるよう駅業務を省力化することもその一つです。改札機に切符が詰まるなどの不具合が起きた時、駅係員がその対応に追われる代わりに、調整作業を自動化する、あるいはそもそも紙詰まりを防ぐためのチケットレス改札機を開発するなど、駅係員の定型的な日常業務を機械に置き換え、駅業務の省力化を実現する最適なシステムを考えています。こうした便利な機能を考え出すだけでなく、セキュリティなどの一見認識しづらい要件についても明らかにし、全体を最適化するのが難しいところです。
また10年先に価値を提供できるシステムを考えることはもちろん、運用が始まってからも、社会環境やお客様のニーズの変化に応じてフレキシブルに改良し続けられるシステムを構築しようと考えています。
当社では、技術者一人ひとりの意志を商品やサービスに反映するためにチャレンジする機会が多くあります。責任も大きいけれど、その分だけ自ら決断を下し、己の力で開発を進めるやりがいを感じます。
数年前、ある鉄道事業者様の定期券ネット予約システムの開発を手がけた時には、企画段階から開発を一手に任されました。どのような機能を備え、どのように運用するシステムを必要としているのか、お客様と何度も議論を重ねるとともに、最適なシステムを構築するためにさまざまなアイデアを投入しました。
完成した定期券ネット予約システムを多くの利用者が使ってくださる姿を見た時、それまで定期券を購入するためにできていた長蛇の列が改善されたのを自分の目で確かめた時、大きな達成感を感じることができました。
開発にあたっては、5年先、10年先の社会で求められることは何か、未来を見据えて実現すべき開発課題を見出さなければならないのが難しいところであり、おもしろいところでもあります。
それを痛感したのは、駅の券売機や改札機の中でICカードを処理するソフトウェアを開発した時です。慎重を期すあまり、開発に時間をかけすぎたために社会環境が変化し、当初の想定と社会のニーズが合わなくなり、開発をやり直なければならなくなったことがありました。
現在は、2030年の社会で価値を提供する次世代システムとは何かを考えながら開発を進めています。手がけた製品が、5年後、10年後、思い描いた通りに価値を発揮できるように知恵を絞ることが、開発の醍醐味です。
当社には、社員がそれぞれの能力を存分に発揮できる環境が整っていると感じています。最近始まった在宅勤務制度もその一つです。結婚し、共働きで子育てしながら仕事をしている一人として、子供の送り迎えが必要な時などに在宅で勤務できるのでとても助かっています。技術者としても、時間や場所を制限されることなく、自由に自分の能力を最大限発揮し、開発に打ち込むことができます。
鉄道や交通などの社会インフラを支えるシステムを作っている以上、誰にとっても使いやすい製品やサービスを作ることを常に考え続けています。幼児からお年寄り、あるいは外国人の方々まで、誰もがもっと便利にスムーズに使えるシステムを作りたいと考えています。
例えば、駅の券売機や改札機などにおいても、端末のシステムはシンプルなものにし、複雑で変化しやすい処理はクラウドなどネットワークにつながった大規模なシステムで行うなど、当社の開発現場でも実現技術の変革が進んでいます。今後、次世代システムの開発にも、IoTやクラウドといった新しい技術を使いこなせる人に加わってほしいと思っています。