小さい頃から街づくりに興味があり、もともとは公務員になろうと考えていました。しかし大学で工学部に進み、研究やものづくりの楽しさを学んだ結果、ものづくりを通して社会に貢献できる企業で働きたいと考えるようになって、志望したのがオムロンでした。実は、理系に進んだきっかけは、自動改札機の誕生ストーリーを描いたドキュメンタリー番組に影響されたことです。後で、それがオムロンの話だったと知り、運命的なものを感じました。
入社時から交通事業をやりたいと強く希望しました。OSSは、一人ひとりの働く意欲を尊重してくれる会社なので、希望通り交通事業に携わることになって、今年で9年目になります。
OSSは、全国の都道府県警本部様の交通管制システムを実現する機器やシステムを提供しています。交通管制システムとは、リアルタイムで交通の状況を把握し、適切な情報をドライバーに提供したり、交通信号をコントロールして車がスムーズに流れるようにするシステムです。その中で、私がチームリーダーを務めているチームは、交差点に設置される交通信号制御機や車両感知器の開発を行っています。
今、取り組んでいるのは、踏切と連動して信号機を制御する列車連動交通信号制御機を更新する開発プロジェクトです。列車連動交通信号制御機は、道路の形状や右折レーンの有無、鉄道会社様から列車の走行情報が入るタイミングなどの条件が案件ごとに違うため、一つひとつカスタマイズ設計を行っていきます。
対象の交通信号制御機は20年以上前に作られた機器であるため、使用している電子部品のほとんどが入手できなくなっており、まったく同じものは作れません。ですから、最新の交通信号制御機をベースとして実現できる仕様を提示するところからプロジェクトはスタートしました。同時に、新しい機能を盛り込むことも提案しました。運用しやすく、より安全な仕組にするため、どのような機能を、どのように盛り込むかについて、お客様と打ち合わせを繰り返し、納得いただける内容になった段階で、開発に着手します。今は、試作機を使って、想定通りのものができているか、検証を進めているところです。より一層の品質向上のため、検証の方法にも工夫を重ねています。
元来ものづくりが好きなので、パソコン上で回路設計したものを、試作品として実際の「もの」にして、自分で動かすという一連の作業はすごく楽しいです。それがうまく動くともちろん嬉しいですし、うまく動かなくても、どこが悪いのかを考え、見つけ、対策できた時には技術者としての喜びがあります。そんな自分のスキルをチームメンバーの助けになるような形で発揮できた時は一層嬉しいですね。
多くの人の安心・安全を担う機器を自分の手で形にしていくという意味での喜びもあります。社会を支える役割の一端を担っているということが一番のやりがいです。人にはあまり知られない地味な仕事かもしれませんが、当たり前に動いている、その当たり前の日常を創るのが自分たちの仕事だと思っています。
私たちが提供する商材やサービスは社会に大きなインパクトをあたえるものばかりです。交通関連でいくと、ユーザーである一般ドライバーに大きな影響を及ぼします。私たちが及ぼす一つのミスが重大な影響を与えるということを常に意識して、品質にこだわるように心がけています。
交通に関わって数年経ちますが今でも、製品の出荷時には緊張します。現地で問題なく動作したと聞いて、初めて一つの仕事が完成した実感がわいてきます。屋外に設置するものなので、温度耐性が高い部品を使い、温度変化に耐えるような設計を行うだけでなく、通常では発生しない高温の室内で試験したり、雷を模した数キロボルトもの電圧をかけたりして、過酷な環境でも問題が起きないよう、あらゆる想定をして対策することも開発の仕事の一部です。人の命に関わる装置なので、品質に対しては強い思いを持って取り組まなければならないと考えています。
それぞれ専門の違うメンバーが集まるチームなので、それぞれのスキルを発揮し、助け合いながら、一緒に考えることによって良いものを作る、それが私たちのチームの開発の方法です。とても風通しの良い雰囲気です。
会社全体としても、困った時は気軽に相談し合える風土があると思います。私も日々、チームメンバーや上司に助けてもらいながら仕事をしていますし、自分が役立てることがあれば積極的にサポートしています。ものづくりに関して前向きにどんどんトライできる環境だと感じています。
交通事業では、機器の老朽化が大きな課題です。安心・安全な道路の交通を守るためには、古くなった機器の更新を加速していく必要があります。そういった社会ニーズにこたえられるよう、高品質で安価な低コストな交通機器の企画・開発を行いたいと考えています。
自動運転も我々の仕事に大いに関係のある技術です。自動運転の車にとって信号機の情報は必要なものだからです。車と社会インフラとの情報のやりとりを、より信頼性の高いやり方で実現していきたいと思います。
もともとまちづくりに興味があったので、人や社会に影響を与えられるような大きな仕事をしたいという目標があります。社会の課題、たとえば、少子高齢化、労働力人口の減少、社会インフラの老朽化、このような大きな課題に、ものづくりを通してトライし続けたいと考えています。